- クレジットカードではキャッシング枠のみ過払い金が発生
- クレジットカードのショッピング枠の手数料は規制の対象外
- クレジットカードのキャッシング枠の過払い金請求はショッピング枠に影響する
- 過払い金請求したクレジットカードは使えなくなる
「過払い金」は借金を返すときに払い過ぎた利息なので、返還を請求できます。過払い金請求ができるのは、消費者金融に対してだけではありません。クレジットカードの借金でも過払い金が発生していて、カード会社に過払い金請求ができるケースがあります。
この記事では、
・クレジットカードで過払い金請求ができるケース
・手続きする際の注意点
以上をわかりやすく解説します。
過払い金とは?
過払い金とは、消費者金融などの貸金業者に払い過ぎた利息のことです。過払い金は法律上「不当利得」という扱いになります。
過払い金は貸金業者が違法に徴収した利息
貸金業者は営利目的でお金を貸してくれるものなので、当然手数料が発生します。利息とは借金した人が貸金業者に払う手数料のことです。利息については、利息制限法という法律で次のような上限規制が設けられています。
元本 | 上限金利 |
---|---|
10万円未満 | 年20% |
10万円以上100万円未満 | 年18% |
100万円以上 | 年15% |
利息を規制する法律には、利息制限法以外に出資法という別の法律もあります。以前は利息制限法の上限を超えていても出資法の上限である年29.2%までは罰則がありませんでした。そのため、多くの貸金業者では、利息制限法と出資法の間のグレーゾーン金利で貸付を行っていたのです。
改正貸金業法(2010年施行)により、グレーゾーン金利が撤廃され、利息制限法を超える利息が違法であることが明確になりました。貸金業者が徴収した利息のうち利息制限法を超えている部分については、「過払い金」という扱いになったのです。
過払い金があれば貸金業者に返還請求できる
民法には、「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う」(703条)と定められています。
過払い金は貸金業者が「法律上の原因なく」得た利益です。過払い金を払った人に損失を及ぼしていることにもなるので、貸金業者には過払い金の返還義務があります。過払い金を払った人は、民法703条を根拠に貸金業者に過払い金返還請求(過払い金請求)ができます。
クレジットカードでも過払い金は発生する?
クレジットカードにはショッピング枠とキャッシング枠がありますが、法律上は異なる扱いとなり、過払い金が発生するかどうかも分かれます。
ショッピング枠では過払い金は発生しない
クレジットカードで買物をしたときには、買物代金をカード会社が立て替えしてお店に払ってくれます。立て替えてもらえる買物代金には上限が設けられており、これをショッピング枠と呼ぶことがあります。
ショッピング枠で立て替えてもらったお金は、後日カード会社に払わなければなりません。カード会社に払うときには、翌月1回払い以外なら手数料が発生するのが通常です。この手数料は利息ではありません。ショッピング枠で立て替えてもらったお金は法律上立替金であり、借金(借入金)とは区別されるからです。
立替金は利息ではないので、利息制限法の適用がありません。ショッピング枠の手数料は規制の対象外ですから、高い手数料を払っていても、過払い金は発生しないことになります。
キャッシング枠は過払い金請求の対象
クレジットカードのキャッシング枠とは、買物しなくても借入ができる枠です。たとえば、キャッシング枠が50万円の場合、借入残高が50万円を超えない限り、カードを使って何度でもお金を借りることができます。
キャッシング枠を使って引き出したお金は借入金なので、消費者金融のカードローンと同様、利息制限法の規制を受けます。返済するときに利息制限法の上限を超える利息を払っていれば、過払い金としてカード会社に返還を請求できます。
利用枠の種類 | ショッピング枠 | キャッシング枠 |
---|---|---|
法律上の性質 | 立替金 | 借入金 |
手数料(利息)に対する規制 | 規制なし | 規制あり |
過払い金発生の有無 | 発生しない | 発生する |
ほとんどのカード会社では、2006~2007年頃まではキャッシング枠でグレーゾーン金利を設定していました。2007年よりも前から持っているクレジットカードでキャッシングした経験がある人は、過払い金が発生している可能性があります。
過払い金が発生しているかどうかは、カード会社に取引履歴を開示してもらえば確認できます。
クレジットカードの過払い金請求の注意点
クレジットカードの過払い金を請求する場合に、注意しておくべきことを確認しておきましょう。
ショッピング残高があればデメリットになることも
クレジットカードではキャッシング枠のみ過払い金請求ができますが、ショッピング枠の利用状況も過払い金請求に影響を与えます。
過払い金はショッピング枠の支払いに充てなければならない
キャッシング枠で過払い金請求をした場合でも、ショッピング枠に利用残高があれば、過払い金はまずショッピング枠の支払いに充てられます。
過払い金を使ってもショッピング枠の利用残高がゼロにならない場合には、債務整理をしたのと同じ扱いとなり、ブラックリストに載ってしまいます。
ブラックリストとは?
「ブラックリストに載る」とは、信用情報機関に金融事故の情報が登録されることです。ブラックリストに載る期間は5年程度ですが、ブラックリストに載っている間はどこの金融機関でも、クレジットカードや各種のローンの新規申し込みを受け付けてもらえません。
過払い金請求すればそのカードは使えなくなる
過払い金請求をすると、その会社のカードは強制解約になり、以降同じ会社や系列会社と取引できなくなることが考えられます。
信用情報機関で事故情報が削除されても、手続きしたカード会社や系列会社には記録が残ります。カード会社側にも顧客を選ぶ自由はあるので、取引を断られる可能性が高くなります。
借金よりも過払い金が少なければブラックリストに載る
キャッシング枠に借入残高が残っている場合、過払い金は残りの借金の返済に優先的に充てるので、借金を減らせます。ただし、過払い金を使っても借金が完済できない場合には、債務整理をしたのと同じことになり、ブラックリストに載ってしまいます。
まだ借金を返済中の場合、過払い金で借金を完済できるかどうかでブラックリストに載るかどうかが分かれます。あらかじめ、過払い金額を計算した上で、慎重に手続きを進める必要があります。
ショッピング枠 | キャッシング枠 | 信用情報への影響 |
---|---|---|
残高なし | 残高なし | 影響なし |
残高なし | 残高あり | キャッシング残高よりも過払い金が少ない場合には影響あり |
残高あり | 残高なし | 影響あり |
残高あり | 残高あり | 残高の合計よりも過払い金が少ない場合には影響あり |
時効になっていれば過払い金請求できない
既に借金を完済している場合には、過払い金請求の時効にも注意しておかなければなりません。過払い金請求ができるのは、カード会社に最後に返済した日から10年です。完済から10年以上経過している場合には、過払い金請求はできません。
貸金業者が倒産してしまった場合は過払い金請求できない
貸金業法改正により過払い金請求が相次いだことで、経営が苦しくなった貸金業者が多数あります。他の会社に吸収合併された会社には過払い金請求できるケースがありますが、消滅してしまった会社に対しては過払い金請求ができません。
クレジットカードの過払い金請求の前にやっておきたいこと
クレジットカードで過払い金請求の手続きをとる前に、やっておいた方がよいことを確認しておきましょう。
ショッピング残高が完済できるなら完済する
ショッピング枠に利用残高がある場合、過払い金で利用残高をゼロにできなければ、ブラックリストに載ってしまうリスクがあります。過払い金請求をする前に、ショッピング枠の利用残高は完済しておくのが安心です。
公共料金等の決済に使っていれば変更しておく
過払い金請求をすればクレジットカード自体が使えなくなります。公共料金の決済などにそのカードを利用している場合には支払いができなくなってしまうため、あらかじめ他の決済方法に変更しておきましょう。
ETCカードが付帯していれば他社に切り替えを
クレジットカードに付帯のETCカードを利用しているケースも多いと思います。過払い金請求をすれば、本体カードだけでなく、付帯しているETCカードも使えなくなります。あらかじめ他社でETCカードを申し込む等しておきましょう。
クレジットカードのポイントは消費しておく
過払い金請求をすれば、クレジットカードは解約になり、その時点で残っているポイントも失効します。せっかく貯めたポイントを使うチャンスを逃してしまわないよう、あらかじめポイントを消費しておくのがおすすめです。
まとめ
過去にクレジットカードでキャッシングをしたことがある場合、過払い金がないかどうかチェックしてみましょう。過払い金がある場合にはカード会社に対して返還を請求できます。
クレジットカードではキャッシング枠でしか過払い金が発生しませんが、手続きをとるとカード自体が使えなくなり、ショッピングもできなくなってしまいます。事前にデメリットを確認した上で手続きをとるようにしてください。