タイトルとURLをコピーしました

当サイトはPRを含みます。

特定調停で過払い金請求はできるのか?調停成立後の対処法も解説

特定調停で過払い金は請求できるのか?
監修田島 聡泰 (たじま あきひろ) / シン・イストワール法律事務所

シン・イストワール法律事務所は借金問題に注力する法律事務所です。事務所を開設してから、これまで任意整理、個人再生、自己破産、過払い金請求など様々なケースの借金事案に対応してきました。

シン・イストワール法律事務所は借金問題に注力する法律事務所です。事務所を開設してから、これまで任意整理、個人再生、自己破産、過払い金請求など様々なケースの借金事案に対応してきました。

この記事でわかること
  • 特定調停の手続き内で過払い金請求はできない
  • 特定調停の取り下げまたは調停不成立となれば過払い金請求ができる
  • 特定調停成立後も過払い金請求はできるが注意点もある
  • 特定調停後の過払い金請求は弁護士・司法書士への依頼が有効

特定調停は、簡易裁判所を通じて行う債務整理の一種であり、弁護士・司法書士といった専門家に依頼しなくても利用しやすい手続きです。そのため、少額の費用で借金を整理することが可能な手続きといえます。

この特定調停の手続きの中で、貸金業者が提出する取引履歴に基づいて利息引き直し計算が行われます。その結果、過払い金が発生していることが判明することもあります。

しかし、特定調停の手続き内で過払い金請求をすることはできません。過払い金請求をするためには、別途手続きが必要になります。

この記事では、下記3点について、わかりやすく解説していきます。

  • 特定調停で過払い金請求ができない理由
  • 過払い金が判明したときに特定調停で注意すべきこと
  • 特定調停後に過払い金請求をする方法

特定調停中に過払い金が判明し、返還請求をお考えの方のご参考になれば幸いです。

特定調停で過払い金請求はできない

冒頭でもご説明したように、特定調停の手続き内で過払い金請求をすることはできません。まずは、その理由をご説明します。

特定調停とは

特定調停とは、簡易裁判所で調停委員を介して貸金業者などの債権者と話し合うことによって借金の減額が可能となる債務整理方法です。

借金を抱えた債務者が特定調停を申し立てると、まず債権者は取引履歴を簡易裁判所へ提出します。

それから簡易裁判所において利息引き直し計算が行われ、その結果に基づいて債権者と債務者が調停委員を介して話し合い、返済額や返済方法を新たに取り決めます。

特定調停でできるのは「債務」の調整だけ

そもそも特定調停という制度の目的は、債務者が負っている金銭債務の利害関係を調整することにあります(特定調停法第1条)。

したがって、手続きの対象となるのは債務者(申立人)が負っている金銭債務だけです。過払い金請求権は申立人から貸金業者に対する債権なので、特定調停の対象外となります。

特定調停でできることは、債務者が負っている金銭債務の減縮や支払い方法の変更、あるいは「債務が存在しない」旨を確認することだけです。

そのため、過払い金が発生している場合は、申立人の債務が存在しないことの確認はできますが、過払い金の返還請求をすることは認められないのです。

過払い金請求は別途行う必要がある

ただ、特定調停の手続きの中で過払い金が判明したからといって、過払い金請求ができなくなるわけではありません。特定調停の手続き内で返還請求をすることは認められないだけです。

過払い金をどのように処理するかについては、基本的に特定調停では関与しないため、別途手続きをとることによって過払い金請求をすることができます。

特定調停で過払い金が判明したときの対処法

特定調停で過払い金が判明したときには、調停外で過払い金請求の手続きをとることになります。

ここでは、進行中の特定調停を終了させる方法と、その際に注意すべき点についてご説明します。

調停を取り下げる

利息引き直し計算の結果、既に借金を完済していて過払い金が発生していることが明らかとなった場合は、もはや調停を継続する必要はありません。

そのため、調停は取り下げてかまいません。調停が終了する前であれば、申立人はいつでも調停を取り下げることができます(民事調停法第19条の2)。

調停を取り下げるには、「調停申立て取下書」を簡易裁判所へ提出します。

【参考】『調停申立て取下書』(裁判所)

調停不成立とする

2つ目の方法として、「調停不成立」として手続きを終了させることもできます。

調停不成立とは、申立人と相手方とが合意に達しない場合に、何も取り決めずに調停を終了することをいいます。

この場合、特に書類の提出は不要で、調停期日において事情を説明し、調停不成立を希望する旨を述べれば足ります。

片面的条項で調停を成立させる

3つ目の方法として、申立人の「債務が存在しない」ことを確認する調停を成立させて手続きを終了させることもできます。

ただし、この場合の調停条項には次の2つのパターンがあることに注意が必要です。

  • 片面的条項…申立人の債務がないことのみを確認する条項のこと
  • 清算条項…申立人と相手方の相互の間に何らの債権債務もないことを確認する条項のこと

片面的条項であれば、申立人の債権である過払い金請求権については何も触れていません。そのため、過払い金請求を阻害されることはありません。

それに対して清算条項の場合は、過払い金請求権についても「存在しない」ことになってしまう可能性がありますので注意しましょう。

特定調停の調書に清算条項があると過払い金請求できない?

では、清算条項で特定調停を成立させてしまった場合は、もはや過払い金請求はできなくなるのでしょうか。

最高裁判例は請求を認めている

この点、調停調書に清算条項が記載されている以上、過払い金請求権は消滅したものとして、請求が認められなかったケースも以前にはありました。

しかし、平成27年9月15日に、清算条項の効力は申立人の過払い金請求権には及ばないと判断した最高裁判例が出ました。

これにより、その後は清算条項で特定調停を成立させた後でも、基本的に過払い金請求が可能となりました。

ただし調停調書の文言には注意が必要

「裁判例」というのは、具体的な事案を前提とした裁判所の判断のことです。前提が異なれば、異なる結論に至る可能性もあります。

今後、事案によっては特定調停における清算条項の効力が過払い金請求権にも及び、請求が認められなくなる場合もないとは限りません。

したがって、現在、特定調停中の方で調停を成立させる場合は、清算条項ではなく片面的条項を調停調書に記載してもらうようにしましょう。

もし、すでに清算条項が記載された調停調書をお持ちの方は、念のために弁護士・司法書士といった専門家に相談することをおすすめします。

過払い金の消滅時効にも要注意

調停調書の記載に問題がなくても、過払い金が時効で消滅している場合もあるので注意が必要です。

過払い金請求権の消滅時効期間は、請求先の貸金業者との最終取引から10年です。通常は完済してから10年となります。

ただ、完済と再度の借り入れを繰り返している場合は、完済したときから10年以上が経過していても、まだ消滅時効が完成していない場合もあります。

そのような場合は、弁護士・司法書士に相談された方がよいでしょう。

以下の記事で「過払い金の時効」について詳しく解説しています。

特定調停後に過払い金請求をする方法

では、特定調停が適切に終了したことを前提に、過払い金請求をする方法をご説明します。

過払い金請求をするには、次の2つの方法があります。

  • 貸金業者との交渉
  • 訴訟の提起

通常は、まず貸金業者と交渉して、話し合いがまとまらなければ過払い金返還請求訴訟を提起するという流れになります。

以下、それぞれについてご説明します。

貸金業者と交渉する

既に特定調停において過払い金の発生額が判明している場合は、以下の手順で手続きを進めます。

  1. 「過払い金返還請求書」を作成して貸金業者へ送付する
  2. 貸金業者と話し合う
  3. 話し合いがまとまれば「和解書」を作成して取り交わす
  4. 和解金の振り込みを待つ

過払い金返還請求書は、内容証明郵便で送付するのが一般的です。そうすることで時効の完成が猶予されますし、後に裁判をするときにもその証拠として利用できます。

貸金業者との話し合いでは、満額の返還で合意できることはまずなく、相当程度の減額を持ちかけられます。

訴訟をした方が回収額は大きくなることがほとんどですが、早期に過払い金を回収したい場合には、金額次第で和解に応じてもよいでしょう。

過払い金請求訴訟を提起する

貸金業者との交渉で納得のいく金額を取り戻せない場合は、裁判所へ過払い金返還請求訴訟を提起します。

訴訟の大まかな流れは以下のとおりです。

  1. 訴状の提出
  2. 第1回の裁判期日
  3. 数回の続行期日
  4. 和解勧試
  5. 証拠調べ
  6. 判決言い渡し

訴状の提出から第1回の裁判期日までの期間は通常、1か月半~2ヶ月ほどです。

その後、おおむね1ヶ月に1回程度のペースで裁判期日が開催され、双方が主張や証拠を出し合います。

最終的には提出された証拠に基づいて判決が言い渡されますが、途中で和解が成立するケースも多くあります。

裁判所から和解を勧めてくるケースもありますし、貸金業者の方から和解を提案してくることもあります。

裁判前の和解案よりは返還額が高額となることが一般的なので、納得できる場合は和解するとよいでしょう。

弁護士・司法書士に依頼する

過払い金請求はご自身で行うこともできますが、ほとんどの場合は貸金業者が提案してくる返還額が低すぎることに驚かれることでしょう。

貸金業者にとっては過払い金の返還が負担となって経営を圧迫することもあるので、少しでも返還額を低くしようとします。

貸金業者への交渉や訴訟手続きには専門的な知識も必要となるので、一般の方が貸金業者と対等に渡り合うのは難しいです。

そのため、過払い金請求は弁護士・司法書士といった専門家に依頼するのがおすすめです。専門家のサポートを受けることによって、過払い金を最大限に取り戻すことが期待できます。

まとめ

特定調停では、そのままでは返済しきれない借金について、貸金業者と話し合うことによって柔軟な解決を図ることが可能です。

弁護士や司法書士に依頼しなくても利用しやすい手続きなので、費用を抑えたい場合には有効な債務整理方法です。ただし、特定調停をするだけでは過払い金を取り戻すことはできません。

過払い金が判明した場合には、早期に返還請求をしなければ消滅時効にかかってしまい、取り戻せなくなるおそれがあります。

特定調停で過払い金が判明した場合は、お早めに弁護士・司法書士に相談して、最大限に過払い金を取り戻しましょう。

メインの執筆者かつ9312

元弁護士。関西大学法学部卒。15年にわたり、債務整理、交通事故、相続をはじめとして、オールジャンルの法律問題を取り扱う。
債務整理では、任意整理、個人再生、自己破産の代行から過払い金返還請求、闇金への対応、個人再生委員、破産管財人、法人の破産まで数多くの事案を担当経験する。

特定調停
24時間365日・全国対応・無料相談 債務整理に強い
弁護士・司法書士はこちら