- 多重債務とは複数の業者から借り入れて返済が苦しい状態のことをいう
- 金利の負担が多重債務に陥る最大の原因である
- 多重債務者におまとめローンはおすすめできない
- 多重債務から抜け出すには債務整理を弁護士・司法書士に依頼するのが得策である
「多重債務」とは、複数の金融機関から借り入れをしていて返済が困難になっている状態のことをいい、このような状態に陥っている人のことを「多重債務者」といいます。
最初は1社から少額を借りただけでも、やがて借金が増えて気がつくと多重債務に陥っているという人が数多くいます。
この記事では、多重債務とは何かについて深掘りして解説するとともに、多重債務に陥る原因や多重債務から抜け出す方法についてもご説明します。
そもそも多重債務とは
冒頭でもご紹介したように、多重債務とは複数の金融機関から借り入れをしていて返済が困難になっている状態のことを意味します。
複数の債務を抱えていても問題なく返済できる場合は特に問題はないので、あえて多重債務と呼ばれることはありません。つまり、一般的に多重債務とは次の2つの問題が同時に発生している状態のことをいいます。
・複数の金融機関から借り入れをしていること
・返済が困難になっていること
この2つの問題について、それぞれ深掘りしてご説明します。
複数の金融機関から借入をしていること
多くの方は、借金をするとしても最初は1社から少額を借りるのみです。
いったん借りたお金をすぐに完済すれば問題はありませんが、以下のような経緯で借金が増えてしまうケースが多くあります。
- 借金をすると1ヶ月後には返済が始まる
- 返済する際には利息も支払う必要がある
- そのため、毎月返済を続けてもなかなか思うようには元金が減らない
- 生活費が不足したり、突発的な出費があったりすると追加の借り入れをしてしまう
やがて限度額一杯まで借りてしまうと、生活費や返済金の不足を補うために別の貸金業者から借りなければならないようになります。2社目も限度額一杯まで借りてしまうと、3社目に手を出すようになります。
このようにして、いくつもの金融機関から借り入れをしてしまう方が多くいます。
返済が困難になっていること
借入先が増えれば増えるほど、毎月の返済額は大きくなります。同じ50万円を借りている場合でも、2社から借りている場合はそれぞれに対して返済が必要です。そのため、1社のみから借りている場合よりも1ヶ月に返済しなければならない金額が大きくなってしまうのです。
数社から借り入れるようになる頃には通常、以下のようにある貸金業者からの借り入れで他社に返済するという「自転車操業」に陥っています。
- A社への返済が困難なため、B社から借り入れてA社に返済する
- B社への借り入れも困難になると、C社から借り入れてB社に返済する
借り入れをするたびに金利がかかるため、自転車操業をすればするほど借金が増えていきます。このようなことを繰り返しているうちに、借入先の件数も借入総額も大きく膨らんでしまいます。
これが、多重債務の実態です。
多重債務者は減っている?
近年、多重債務者は減ってきているといわれています。その原因は、2010年6月から改正貸金業法の施行に伴って「総量規制」が実施されたことによります。
総量規制とは、個人が貸金業者から借り入れることができる金額の上限を年収の3分の1までに制限する制度のことです。
実際、日本信用情報機構(JICC)が公表しているデータによると、以下のように2件以上の借り入れをしている人の人数は減少しています。
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このように、データを見ると約10年で多重債務者は半数以下に減っています。しかし、この事実は必ずしも収入が増えた人が多くなったことを意味するものではありません。
むしろ、どこからも借金することができなくなった結果、早めに債務整理などによって借金問題を解決する必要に迫られる人が増えたことを意味すると見るべきでしょう。
多重債務に陥る原因とは
多重債務に陥る原因は人それぞれですが、多くの人に共通する原因として以下のようなことが挙げられます。
生活費の不足をカードローンで補う
まず第一の原因は、生活費の不足を補うために借金をすることです。
生活費が足りない場合は、家計を見直して支出を減らしたり、収入を増やしたりする対策が必要です。安易に借金をすると、以下のような経緯で借金がすぐに増えてしまいます。
- 収支に変化がなければ、翌月も生活費が不足する
- その上に返済の負担も加わる
- 生活費と返済のために追加で借り入れをする
ただ、税金や社会保険料が増大する一方で収入を増やすことが難しい社会情勢の元では、家計を改善するにも限りがある世帯も多いものです。
そのためにやむを得ず借金をしてしまう方も少なくありませんが、その場合でも同じ経緯で借金が増えてしまいます。
クレジットカードのリボ払いでショッピングをする
気づかないうちに借金が増えてしまう原因として、クレジットカードのリボ払いの利用が挙げられます。
リボ払いとは、クレジットカードの利用代金を分割で支払う際に支払回数を指定するのではなく、毎月の支払い額を一定額に指定する支払い方法のことです。この方法を選択すると毎月の支払い額は少額で済みますが、そのうちの多くが利息の支払いに充てられてしまい、元金がなかなか減らないということが起こりがちです。
また、毎月の支払額が少ないために油断して次々に買い物をして、気がついたら利用代金が多額に上っていたというケースも多くあります。
クレジットカードの中には、利用者が設定を変更しない限りリボ払いが適用されるものも多いので、注意が必要です。
返済のために借入をする
先ほどもご説明しましたが、返済のために借り入れをするようになるとあっという間に借金が膨らんでしまいます。
返済金が足りないために借り入れをすると、新たに借り入れた元金に加えて利息も返済しなければならないため、翌月も返済金が足りなくなることは目に見えています。
多重債務者がおまとめローンに手を出すのが危険な理由とは
返済に苦しんでいる多重債務者に人気がある金融商品に「おまとめローン」があります。おまとめローンとは、複数の金融業者からの借金を借り換えて一本化するためのローンのことです。
おまとめローンを利用すると借入先がひとつになるので返済の管理がしやすくなり、金利も今までより安くなるというメリットがあります。
しかし、多重債務者がおまとめローンに手を出すと、以下の理由で結果的に借金が帰って増えてしまうケースがよくあります。そのため、おまとめローンの利用はあまりおすすめできません。
おまとめローンにも金利がかかる
銀行のおまとめローンなら消費者金融からの借金よりも金利が安いですが、それでも金利がかかることに変わりはありません。
仮に金利5%のおまとめローンを利用できたとしても、元金が200万円あれば月に約8,400円の利息がかかります。もともと生活費が足りずに借金をした多重債務者にとって、元金とは別にこれだけの利息を支払うことは厳しいでしょう。
また、銀行系の消費者金融も数多くのおまとめローンを提供していますが、これらは消費者金融の借金とそう変わらない金利がかかる場合もあります。
返済が長期化する
おまとめローンで借金を一本化すると、1社から多額の借金をしている状態になります。そのため、返済は長期間に及びます。たとえ金利が低いとしても、返済が長期間に及ぶと利息の負担が重くなってしまいます。
また、長期間の返済を続けているうちに再び生活費が不足したり、突発的な出費が発生したりすることもあるでしょう。そんなときに新たに借り入れをしてしまうと、おまとめローンを利用する前よりも借金が増えることになりかねません。
完済した業者から再度借り入れる人が多い
おまとめローンを利用すれば、それまで借り入れていた金融機関に対しては全て完済することになります。完済した金融機関からは、いつでも再度借り入れができる状態になっています。
そのため、おまとめローンの返済が苦しいときに、完済した金融機関から再度借り入れてしまう人が多くいます。
その後は自転車操業が再開され、あっという間に借金額が従前の2倍になってしまうケースもよくあります。
多重債務を解決できる4つの方法とは
多重債務に陥ってしまい、家計の見直しや増収の努力だけでは返済しきれない場合は債務整理によって解決するのがおすすめです。
債務整理には、次の4つの方法があります。
- 自己破産
- 個人再生
- 任意整理
- 特定調停
この4つの方法のそれぞれについて、どんな方に向いているのかをご説明します。
自己破産
自己破産とは、裁判所へ申し立てることによって全ての借金が免除される債務整理方法です。到底返済できないほど多額の借金を抱えてしまった方には自己破産が向いています。
ただし、自己破産には次のようなデメリットがあります。
- 大半の財産を処分しなければならない
- 手続き中は一定の資格や職業に就くことが制限される
- 借金の使い途によっては借金が免除されないことがある
したがって、以下のような方は自己破産に向いていないので、他の債務整理方法を検討する必要があります。
- マイホームなど手放したくない財産がある方
- 士業や一部の公務員、警備員、保険外交員など制限を受ける資格や職業に就いている方
- 浪費やギャンブルに借金を使用した方
個人再生
個人再生とは、裁判所に申し立てることによって借金を原則5分の1に減額してもらい、減額後の借金を3年~5年で分割返済していく債務整理方法です。
多額の借金を抱えたものの、手放したくない財産がある方や、自己破産をすると制限を受ける資格や職業に就いている方、浪費やギャンブルのために借金を作った方などには個人再生が向いています。
ただし、個人再生にも次のようなデメリットがあります。
- 保証人がいる場合は、保証人が一括返済の要求を受ける
- 将来にわたって継続的または反復した収入を得られることが条件
- 借金総額が5,000万円を超える場合は利用できない
これらのデメリット避けるためには、他の債務整理方法を検討する必要があります。
任意整理
任意整理とは、裁判所に申し立てることなくそれぞれの債権者と任意に交渉することによって借金の返済額や返済方法を変更してもらう債務整理方法のことです。
任意整理には自己破産や個人再生の場合のようなデメリットはないので、誰でも手軽に利用することができます。ただし、任意整理では将来利息はカットできるものの、元金を減額することは基本的にできません。そのため、借金の大幅な減額は期待できないというデメリットがあります。
したがって、任意整理は借金総額が比較的少ない方に向いています。特に借金総額が100万円以内の場合は個人再生をするメリットがないため、任意整理を選択すべきといえます。
特定調停
特定調停とは、簡易裁判所における調停手続きを利用して債権者と話し合い、借金の返済額や返済方法を変更してもらう債務整理方法です。
債権者と直接交渉する必要はなく、簡易裁判所の調停委員が話し合いの仲立ちをしてくれます。そのため、任意整理とは異なり、弁護士や司法書士に依頼しなくても自分で比較的簡単に利用できるというメリットがあります。
したがって、特定調停は任意整理を専門家に依頼する費用が用意できない方に向いています。
多重債務を解消するために弁護士・司法書士に相談するメリットとは
4種類の債務整理方法についてご説明しましたが、債務整理を行う場合は弁護士や司法書士といった法律の専門家に相談・依頼するのがおすすめです。
多重債務者が専門家に相談・依頼することには以下のようなメリットがあります。
すぐに支払い催促が止まる
弁護士や司法書士に債務整理を依頼すると、ただちに貸金業者などの債権者に対して受任通知を送付します。受任通知が債権者に到達した時点で取り立てや催促が止まります。
厳しい取り立てや催促を受けている場合は、まず専門家に債務整理を依頼して取り立てや催促を止めて、落ち着いた状態で債務整理の方針を考えることもできます。
自分に合った解決法のアドバイスが受けられる
どのような方にどの債務整理方法が向いているのかについては先ほどご説明しましたが、個別の事情によって適している債務整理方法は異なってきます。
専門家のアドバイスを受けることで、ご自分の状況にあった最適な債務整理方法を選択することが可能になります。
債務整理の手続きが正確にできる
先ほどご紹介した4種類の債務整理方法は、全てご自分で行うことも不可能ではありません。
しかし、それぞれに複雑な手続きが必要ですし、手続きを誤ると債務整理に失敗してしまい、借金問題を解決できなくなるおそれもあります。
弁護士や司法書士に依頼すれば複雑な手続きや面倒な手続きも全て代行してもらえるので、債務整理手続きを正確に進めることができます。
まとめ
多重債務に陥った方も、最初に借金するときは十分に返済できると思っているものです。しかし、金利の負担に苦しみ、借金を重ねいるうちにいつの間にか多重債務に陥る方が多いことは、この記事でお伝えしてきたとおりです。
このままでは返済しきれないと思ったときは、借金を重ねるのではなく、早めに弁護士や司法書士などの専門家に相談し、正しい解決方法についてアドバイスを受けることが大切です。
まずは、お近くの専門家に相談されてみてはいかがでしょうか。