- 積み立て型の生命保険は債務整理をすると解約しないといけないことがある
- 自己破産をすると生命保険は解約される
- 生命保険の解約を回避する方法はある
- 債務整理をしても生命保険に加入できる

この記事は以下のような方にオススメです!
・債務整理はしたいけど、生命保険が解約されるか心配な方
・債務整理後に生命保険に加入できるのかを知りたい方
・債務整理による生命保険の解約を回避する方法を知りたい方
債務整理を行えば、借金を減額したり、債務の分割払いをする計画を立てたりすることで債務問題を解決することができます。しかし一方で、債務整理の手続き方法によっては、生命保険を含む自分の財産を失うこともあリます。
それもあってか、「今加入している生命保険は解約しないといけないのだろうか」「その後生命保険には加入できるのだろうか」と不安に思っている方は多いのではないでしょうか。
この記事では、債務整理をすると生命保険は解約されるのか、新たな生命保険には加入できるのか、といった疑問に答えていきます。

債務整理が生命保険に与える影響と、解約を回避する方法を一緒に確認しましょう!
生命保険には2種類ある
生命保険は、その内容によって大きく「掛け捨て型」と「積み立て型」の2つに分けることができます。
掛け捨て型 | 積み立て型 | |
---|---|---|
解約返戻金 | なし | あり |
保険料 | 少額 | 高額 |
意味合い | あくまで「保険」 | 「財産」的な側面 |
掛け捨て型
掛け捨て型の生命保険とは、解約するときに掛け金が全く戻らないか、わずかしか戻らない保険商品のことです。
毎月支払う保険料の額は少額に抑えられ、万が一の事故などの際にはまとまった金額が支給される仕組みです。したがって、掛け捨て型の生命保険はあくまでも緊急事態に備えた保険としての意味合いが強く、保険料はその対価として支払います。
このことから、生命保険自体が「財産」として扱われることは基本的にありません。
積み立て型
積み立て型の生命保険とは、解約するときにそれまで支払った掛け金が解約返戻金として戻ってくるか、契約の満期を経過すると掛け金が満期返戻金として戻ってくる保険商品のことです。
その分、毎月支払う保険料の額はある程度まとまった額になります。したがって、積み立て型の生命保険は万が一の事態の準備をするという意味合いと、資産形成の手段としての貯蓄の意味合いを持ちます。
よってしばしば「貯蓄型保険」という別称で呼ばれることもあります。このことから、多くの場合生命保険自体が「財産」として扱われます。
・「掛け捨て型」は財産として扱われることはない
・「積み立て型」の場合、財産として扱われる事が多い
債務整理すると生命保険は解約しないといけないのか
債務整理に伴って、加入している生命保険は解約しなければならなくなるのでしょうか。ここでは、任意整理・個人再生・自己破産の3種類の債務整理について説明します。
ここで解約の要否が問題となるのは、掛け金自体に財産的な価値が付与される「積み立て型」の生命保険に加入している場合です。
債務整理の項目 | 生命保険解約の必要性 | 理由 |
---|---|---|
任意整理 | なし | 債権者から資産(保険)の処分を迫られることはない |
個人再生 | なし | 資産処分は自由。解約返戻金が大きい場合は要注意 |
自己破産 | 条件付きであり | 20万円以上の解約返戻金があれば解約が必要 |
任意整理の場合
任意整理は、債権者と協議することで利息をカットし、債務の元本を原則3年で分割返済する債務整理の方法です。
任意整理では裁判所を介すことなく当事者だけで手続きを進めます。そのため、債務者の側から債権者を選んで交渉し、特定の債権者だけに返済することも可能です。
任意整理は自己破産と違って裁判所が財産調査を行うことはありません。加入している積み立て型の生命保険が資産として扱われることはないため、保険の解約を迫られることはありません。全て自分の意思で処分することができます。
個人再生の場合
個人再生は、裁判所の手続きを経由することで債務額を大幅に削減し、残った債務を分割返済する債務整理の方法です。
裁判所を利用しますが、財産の処分は自由であり、基本的に積み立て型の生命保険を解約しないといけないことはありません。
しかし、例外として処分可能な財産の合計額が個人再生の最低弁済額よりも多い場合は、その相当分を支払わなくてはなりません。したがって、積み立て型の生命保険の解約返戻金が高額な場合は、それだけ再生計画で定められる返済額も高額になります。
積み立て型の生命保険自体に影響はないですが、個人再生するときの返済額に影響が及ぶという点には注意しましょう。
自己破産の場合
自己破産は、裁判所の手続きを経由することで財産の多くを手放す代わりに債務を帳消しにする債務整理の方法です。
自己破産では、生活に最低限必要な物品と99万円以内の現金以外は全て残すことが許されません。
積み立て型の生命保険も、20万円以上の解約返戻金がある場合は没収され債務返済の対象になります。よって、裁判所から生命保険の解約を請求されます。
実際には、裁判所に申立てをする前に自己破産を依頼した弁護士から保険の解約を求められることが多いです。
・個人再生の場合、財産の処分は自由であるため、生命保険を解約する必要はない
・自己破産は一定の財産以外は手放す必要があるため、生命保険の解約を請求される
自己破産の際に生命保険の解約を回避する方法
自己破産では、多くの場合積み立て型の生命保険の解約をしなければならなくなります。しかし、その解約を回避する方法は存在します。
自由財産の拡張
前述したように、自己破産の際に手元に残すことができる、生活必需品と99万円以内の現金は「自由財産」と呼ばれます。自由財産が認められるのはなぜかというと、自己破産制度の目的である、破産者の経済的な再生と生活の維持を可能にするためです。
本来積み立て型の生命保険の解約返戻金は自由財産には該当しませんが、金額が20万円以下の場合は「自由財産の拡張」として保持を認められる可能性が高くなっています。
したがって、その場合積み立て型の生命保険の解約はしなくてもよいことになります。また、20万円を超える解約返戻金でも裁判所の裁量によっては自由財産として認められることもあります。
自由財産とは、破産者の財産のうち破産財団に属しない財産を指します。簡単に説明すると、自己破産をしても手放さなくて良い財産のことです。99万円以下の現金や生活必需品、自己破産手続き開始後に手に入れた財産(新得財産)が自由財産の代表例です。
契約者貸付制度の利用
積み立て型の生命保険には、解約返戻金の一部を保険会社から融資として受けることができる「契約者貸付制度」が存在します。この制度を使って貸し付けを受けることで解約返戻金の額を20万円以内に抑えれば、強制解約を求められることはありません。
ただし、貸付金の用途については自己破産の際に調査が入ります。このお金をギャンブルなどに使うことは許されず、もし間違った使い方をすれば免責不許可決定が下されて自己破産ができなくなる恐れがあるので気をつけましょう。
保険法の介入権制度の利用
高齢の方や持病を持っている方が自己破産をして積み立て型の生命保険を解約する場合、再び保険に加入することが難しいケースがあります。
このような事態を避けるため、保険法では保険金の受取人と保険契約者の合意のもとで解約返戻金相当の金額が支払われれば、生命保険を継続することができる「介入権制度」が設けられています。この制度を利用すれば、生命保険の解約を阻止することができます。
ただし、この権利を行使できるのは「被保険者」と「契約者・被保険者の親族」のみとなっています。また、解約返戻金相当の金額の支払いは、保険契約が解除されてからその効力が実際に発生するまでの期間である1ヶ月以内に行う必要があるので注意しましょう。
・契約者貸付制度を利用し払戻金を20万円以下に抑えれば、強制解約を請求されない
・持病持ちの方や高齢者の場合「介入権制度」の利用で生命保険を継続可能
債務整理後も生命保険に加入できるか|ブラックリストの影響は?
債務整理を行うと、そのことが信用情報機関に「事故情報」として登録されます。これがいわゆる「ブラックリストに載る」状態で、新たに貸し付けを受けることやクレジットカードを発行することが事実上不可能になります。
しかし、ブラックリストに掲載された状態であっても生命保険の契約をすることはできます。なぜなら、生命保険会社が契約締結の際に信用情報機関を参照することは基本的にないからです。
保険会社が参考にするのは、申請者の健康状態や持病の有無、今後事故に巻き込まれるリスクなどです。また、たとえ保険料が払えなくなっても保険契約が解約となるだけなので、信用情報は必要ないのです。
まとめ
債務整理の中でも、任意整理は生命保険の解約は必要ないですが、個人再生・自己破産では生命保険は解約されることが多いです。しかし、たとえそうなっても解約を避ける方法は存在します。また、債務整理をしたことはその後の生命保険への加入には一切影響しません。
ですから、債務整理をしても現在加入している生命保険および将来加入する生命保険への影響はほとんどないと言えます。よって、債務整理(主に自己破産)をするメリットの方が大きいのです。
もし、生命保険関係で不安があり、債務整理をすることを躊躇している方には、思い切って手続きを進めることをおすすめします。
手続き面などにおいて自分一人では心配な場合は、弁護士や司法書士といった専門家に相談するのが安心です。自分のライフスタイルに合った問題の解決策を考え、提示してくれるでしょう。