- 債務整理にかかる費用は種類によって異なる
- 専門家に依頼すると別途料金がかかる
- 費用が払えない場合の対処法
債務整理は、必要書類の提出や裁判所とのやりとりが発生するため、一定の費用がかかります。さらに、弁護士や司法書士といった専門家に手続きを依頼する場合は、手続き自体にかかる費用に加えて、別途費用が必要です。
したがって、これから債務整理を行い、借金を減らしたいと思われている債務者の方は、自分が行う予定の債務整理に、どの程度費用がかかるのかをあらかじめ把握しておく必要があります。
この記事では、
・債務整理そのものにかかる費用
・専門家に依頼する場合の費用
・費用が払えない場合の対処法
以上3点をわかりやすく解説します。債務整理の費用を詳しく知りたいという方のご参考になれば幸いです。
債務整理の費用は用いる種類によって異なる
債務整理には、
・任意整理
・個人再生
・自己破産
・特定調停
以上4つの種類が存在します。ただし、必要書類の提出や裁判所とのやりとりが必要となることから、それぞれ費用が異なります。
以下で、各債務整理にどの程度費用がかかるのかを詳しく解説します。
なお、ここでは弁護士や司法書士に依頼する場合の費用は含まずに解説します。専門家へ依頼する際の相場は後半で解説しますので、必ず目を通すようにしてください。
任意整理の費用相場
任意整理とは、債権者と債務者が話し合い、その合意によって毎月の返済額や利息などを調整し借金を返済していく債務整理です。
任意整理は債権者との書類のやり取りがメインになるため、裁判所は利用しません。そのため、任意整理自体にかかる費用は、切手代や紙代のみですから多額な費用は必要ありません。
個人再生の費用相場
個人再生(民事再生)とは、裁判所を通して借金の総額を大幅に減額する債務整理です。個人再生は裁判所とのやり取りが必要となるため、裁判所との手続きに関する費用が必要です。
裁判所へかかる費用は各裁判所によって異なりますが、おおよそ収入印紙1万円、官報掲載費約13,000円、郵便切手代約2,000円で合計26,000円程度で手続きを行えます。
ただし、個人再生委員が選ばれた場合には報酬として25万円程度がかかります。再生委員とは、個人再生を申し立てた人との面談や財産の調査を行ってくれる人で、多くは裁判所管轄地域の弁護士から選ばれます。再生委員が選任されるかは各裁判所によって異なりますが、東京裁判所(立川支部も含む)では、必ず選任されます。
以下は個人再生の手続きにかかる費用の内訳です。
内訳 | 金額 |
---|---|
収入印紙代 | 1万円 |
官報掲載費用 | 約1万4千円 |
郵便切手代 | 約2,000円 |
再生委員への報酬 | 約20万円 |
合計 | 約27万円 |
自己破産の費用相場
自己破産も個人再生と同じく、裁判所を通す債務整理です。自己破産では、必要最低限以外の財産を手放す代わりに借金の返済を免除してもらいます。
自己破産を行う場合には、自己破産の種類(同時廃止・少額管財事件・管財事件)に合わせた予納金が必要となるため、自分の財産を把握しておくことが重要です。
同時廃止は財産がない場合、少額管財事件はある程度の財産を持っている場合、管財事件は持ち家などの財産を持っている場合に適用される手続きです。
以下は自己破産の手続きにかかる費用の内訳です。
内容 | 金額 | 備考 |
---|---|---|
収入印紙代 | 1,500円 | 申立て料 |
郵便切手代 | 3,000〜15,000円 | 借入先数により変動 |
予納金 | 1〜3万円 | 同時廃止の場合 |
20万円 | 少額管財事件の場合 | |
50万円 | 管財事件の場合 |
特定調停の費用相場
特定調停とは、債務者と債権者との間に裁判所が介入することで、解決案を提示する債務整理です。任意整理と同様に、利息制限法に基づく引き直し計算などによって、借金の総額を圧縮できます。
特定調停は任意整理と比較すると手続きが煩雑というデメリットがありますが、「原則として本人が手続きを行うため費用を抑えることができる」、「裁判所という公的機関が仲介する」というメリットがあります。
特定調停にかかる費用は、任意整理同様に収入印紙代や切手代のみとなるため多額な費用は要しませんから、費用で心配する必要はありません。
債務整理を専門家に依頼する場合の費用相場
債務整理に必要な手続きの多くは、債務者自身が行うことも可能です。ただし、債務者は日常のあらゆる業務を停止させ、必要書類の準備や債権者との交渉、裁判所との手続きなど、すべて自分で行う必要があります。
債務整理を考えている債務者の方の多くは、日々の返済に追われているわけですから、時間を確保してすべて自分で手続きを進めることは現実的ではありません。したがって、弁護士や司法書士に債務整理の手続きを依頼するのが一般的です。
以下では各債務整理を専門家に依頼する場合の費用相場を詳しく解説します。
任意整理を専門家に依頼する場合の費用
任意整理を専門家に依頼すると、「債権者がまともに対応してくれない」、「話が合意にいたらない」などのリスクを回避できます。そのため、弁護士や司法書士に依頼して行われるのが一般的です。
以下が任意整理を専門家に依頼する場合の費用相場です。
内訳 | 費用 |
---|---|
着手金 | 1債権者あたり2〜4万円 |
減額報酬 | 減額できた金額の10% |
個人再生を専門家に依頼する場合の費用
個人再生は裁判所とのやりとりが発生するため、よほどの理由がない限り専門家に依頼するのが一般的です。
個人再生は弁護士に比べ司法書士の方が相場が安い傾向にありますが、債務額が140万円を超える場合の法律相談・交渉・訴訟などの業務に制限がかかるため注意が必要です。
以下が個人再生を専門家に依頼する場合の費用相場です。
依頼先 | 金額 |
---|---|
弁護士 | 30万〜60万円 |
司法書士 | 30万〜40万円 |
自己破産を専門家に依頼する場合の費用
自己破産は、他の債務整理に比べ弁護士への依頼が特に重要です。管財事件に進む見込みがある債務者の方は、弁護士に依頼することで通常の管財事件よりも手続きに要する時間を短くできます。さらに、弁護士に依頼すると少額管財事件になるため、裁判所費用を約20万円抑えることができるというメリットがあるのです。
以下が自己破産を専門家に依頼する場合の費用相場です。
依頼先 | 金額 |
---|---|
弁護士 | 20万〜50万円 |
司法書士 | 15万〜30万円 |
特定調停を専門家に依頼する場合の費用
特定調停は、原則として債務者自身が裁判所を通して債権者と交渉をする債務整理です。そのため、ほとんどの債務者の方は自ら手続きを行っています。
特定調停は弁護士などの専門家に依頼することも可能です。弁護士に依頼する場合は10万円〜30万円が相場です。ただし、弁護士に依頼することで面倒な手続きを任せられる反面、費用がかからないという特定調停のメリットが失われますので注意してください。
債務整理の費用が払えない場合の対処法は?
債務整理を行いたくても、その費用が賄えないという問題があります。ただし、通常であればそのような問題は解決可能です。ここでは、債務整理の費用が払えない場合の対処法を解説します。
法テラスを利用する
費用に心配がある方は、まずは法テラスを利用すると良いでしょう。法テラスとは、法律支援を目的とした国の支援機関で、「日本司法支援センター」といい、日本全国に支所があるため、どなたでも利用できます。
法テラスでは、弁護士や司法書士による無料相談を受けられるだけではなく、「民事法律扶助制度」を受けることができます。民事法律扶助制度とは、自己破産などの弁護士費用が用意できない場合に、法テラスに立替え払いをしてもらう制度です。
立替えた弁護士費用は後に分割で支払うことになりますが、この制度を利用すると成功報酬金が免除され、着手金が通常料金よりも低額になるというメリットがあります。
ただし、裁判所にかかる費用は立替えできませんので注意してください。
司法書士に依頼する
司法書士は弁護士と比べて依頼金が安いというメリットがあります。司法書士に債務整理を依頼することで、着手金や成功報酬の一方が不要になるなど、弁護士事務所の相場よりもやや低い傾向にあります。
ただし、司法書士は弁護士よりも行える業務に制限がかかることがあります。自分の行いたい債務整理を司法書士に依頼しても大丈夫であるかを確認してから相談するようにしてください。
分割払い・後払いができる専門家に依頼する
弁護士事務所・司法書士事務所の中には、債務整理の費用をまとめて支払えない債務者の方を対象に、分割・後払いに対応している事務所があります。
債務整理を行おうとしている債務者の方は、経済的に追い込まれている方も多いため、専門家事務所も支払いには柔軟に対応してくれる傾向にあります。
専門家に依頼する場合には、現在の経済的状況を隠すのではなく、正直に相談するようにしてください。
まとめ
債務整理は、借金返済に苦しむ人が自分の人生を立て直すことができる法的手段です。
ただし、債務整理は種類によって費用が異なります。さらに専門家に依頼する場合には、依頼する事務所の料金が相場に見合った適切な料金設定であるかを見極める必要があります。
専門家に債務整理を依頼することで、
・債務整理のアドバイスを受けられる
・必要書類を適切に用意してくれる
などのサポートを受けることができます。納得のいく専門家の力を借りて、自分に合った方法で債務整理を行いましょう。