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自己破産すると年金は差し押さえられてしまうのか?

自己破産すると年金は差し押さえられてしまうのか?
この記事でわかること
  • 自己破産しても公的年金と企業年金は差し押えを受けない
  • それ以外の保険は解約返戻金が20万円超の場合に解約となる
  • 年金受給前に自己破産しても年金の支払い義務は消えない

自己破産を検討されている年金受給者や年金受給が間近に迫っている方は、自己破産をしても年金はもらえるのかと心配に思うことでしょう。

自己破産をすると年金も差し押えの対象となりますが、すべての年金が差し押えられるわけではありません。以下の年金は自己破産をしても影響を受けませんので、予定通り受給できます。

  • 国民年金
  • 厚生年金
  • 老齢年金
  • 障害年金
  • 遺族年金
  • 付加年金
  • 寡婦年金
  • 死亡一時金
  • 確定給付型個人年金
  • 確定拠出型個人年金
  • 国民年金基金
  • 確定給付企業年金
  • 確定拠出年金
  • 厚生年金基金
  • 上記以外の個人年金で解約返戻金が20万位内の年金

この記事では、自己破産をすると年金を差し押さえされるケースについて解説します。

自己破産しても公的年金は差し押さえられない

年金には、大きく公的年金と私的年金の2種類に分けられます。

早速結論から言うと、自己破産しても公的年金と私的年金の中の企業年金であれば差し押さえを受けることはありません。詳しく見ていきましょう。

公的年金とは

公的年金とは、厚生年金や国民年金などを指します。公的年金は、日本で暮らす20歳以上60歳未満のすべての方に加入義務があり、一般的に会社員の方は厚生年金、自営業の方は国民年金に加入し、支払いをしています。

いわゆる年金と呼ばれ、多くの方に認知されているのは、公的年金を指す場合がほとんどです。この公的年金は、国民の老後の生活資金として国から支払われるものであり、たとえ自己破産したとしても、将来受け取るはずの年金が差し押さえられたり、減額されたりする心配はありません。

もちろん、年金受給中に自己破産をしても影響はありませんのでご安心ください。

【自己破産をしても差し押さえられない公的年金の種類】
国民年金、厚生年金、老齢年金、障害年金、遺族年金、付加年金、寡婦年金、死亡一時金

私的年金とは

私的年金とは、企業年金や個人年金を指します。

企業年金

企業年金は、企業に勤務している方が退職時に退職金の代わりに受給できる制度です。原則的には企業側が積立金を負担していますが、給与の中から本人が一部を負担しているケースもあります。

よく「確定給付企業年金」や「確定拠出年金」と呼ばれるものです。この企業年金は自己破産の処分対象外となっているため、将来もらえなくなったり、減額されたりする心配はありません。

【自己破産をしても差し押さえられない企業年金の種類】
確定給付企業年金、確定拠出年金、厚生年金基金

個人年金

個人年金は、個人が保険会社などで個別に契約することで受け取れます。具体的には、毎月定額の保険料を積み立て、支払い満期後に一定の年齢に達すると受け取れるという金融商品です。

個人年金にも、様々な種類のものがあります。確定給付型個人年金、確定拠出型個人年金、国民年金基金については、法律で差し押さえが禁止されています。そのため、自己破産しても処分されることはありません。そもそも、これらの個人年金は原則として途中解約ができないものです。

最近、利用者が増えているiDeCo(イデコ)は確定拠出型個人年金の一種なので、自己破産しても将来もらえなくなったり、減額されたりする心配はありません。

一方で、民間の保険会社と契約する個人年金保険の中には、途中解約が可能で解約返戻金が支払われるものもあります。このタイプの個人年金は処分可能な財産となるため、自己破産すると差し押さえられる可能性があります。

後で詳しくご説明しますが、個人年金のうち解約返戻金が20万円を超えるものは、自己破産すると差し押さえられてしまいます。

【自己破産をしても差し押さえられない個人年金の種類】
確定給付型個人年金、確定拠出型個人年金、国民年金基金

【自己破産をすると差し押さえられる個人年金の種類】
個人年金保険のうち解約返戻金が20万円を超えるもの

加入している年金の種類を確認する方法

公的年金は差し押さえられない、個人年金の一部は差し押さえられる可能性がある、ということになると、自己破産を検討する際に加入している年金の種類を確認しておくことが重要です。

よくわからない場合には、以下の方法で確認しましょう。

  • 公的年金は「ねんきん定期便」でチェック
  • 企業年金は勤務先の担当部署に問い合わせ
  • 個人年金は企業へ問い合わせ

公的年金は「ねんきん定期便」でチェック

公的年金(国民年金および厚生年金)への加入状況には、毎年届けられる「ねんきん定期便」に記載されています。

ねんきん定期便を紛失して手元にない場合で、早急に確認する必要があるときは、年金事務所に問い合わせましょう。本人確認を行った上で、加入状況を教えてもらえます。

企業年金は勤務先の担当部署に問い合わせ

企業年金の掛金が給与から天引きされている場合は、給与明細に記載があるはずです。まずは給与明細の「控除」の項目を確認してみましょう。

ただ、給与明細を見ても詳細がわからないこともあるでしょう。また、企業年金に加入していても、必ずしも掛金が給与から天引きされるとは限りません。わかりにくい場合には、勤務先の人事や総務などの担当部署に問い合わせて、加入状況や年金の種類を正確に教えてもらった方がよいでしょう。

個人年金は企業へ問い合わせ

個人年金に加入している可能性がある場合は、まずは手元の書類を確認してみましょう。加入した際に「加入員証」や「保険証書」などが発行されているはずですし、年に1回程度、加入状況や運用状況に関する案内書も送られてきているはずです。

これらの書類をよく見て、個人年金保険であれば解約返戻金があるのか、ある場合は現時点での見込額がいくらかを確認する必要があります。20万円を超えていると、自己破産すると解約されることになるからです。

書類を見てもよくわからない場合や、書類が手元にない場合は、個人年金を契約した保険会社や金融機関に問い合わせて、正確に確認しましょう。

自己破産をすると個人年金保険は解約しなければならない場合がある

個人年金保険は、他の養老保険や学資保険などといった積立型の保険と分類的には同じになります。

自己破産の手続き上、こういった積立型の保険は生活する上で必要最低限の財産とは評価されないため、強制処分の対象となります。

しかし、個人年金保険のすべてが処分対象になるわけではありません。処分対象となるのは、自己破産を申し立てた後、破産手続開始決定が行われる時点の解約返戻金が20万円を超える保険契約のみです。

なぜなら、自己破産では個別の財産は20万円まで手元に残すことが認められているからです。このように、自己破産しても保有することが許されている財産のことを「自由財産」と呼びます。

つまり、解約返戻金が20万円以下であれば自由財産となるので、自己破産しても解約される心配はなく、そのまま保険契約を継続できます。しかし、解約返戻金が20万円を超える場合には、自己破産すると解約され、解約返戻金の全額が差し押さえられてしまうことに注意が必要です。

年金受給者が自己破産する場合の注意点

上述のとおり、自己破産しても公的年金や、年金保険以外の個人年金が差し押さえられる心配はありません。

しかし、現在年金を受給している方が自己破産する場合、いくつかの注意点があります。

  • 受給して現金や預金として保有している年金に注意
  • 銀行口座の凍結に注意
  • 税金の滞納に注意
  • 年金担保貸付に注意
  • 年金以外の財産に注意

受給して現金や預金として保有している年金に注意

年金が差し押さえられないというのは、正確にいうと「年金の受給権」が差し押さえられないという意味です。既に受給した年金を現金や預金として保有している場合は、金額によっては自己破産すると差し押さえられる可能性があります。

自己破産では、現金および預金については、以下の金額までが自由財産として認められています。破産手続開始決定の時点で以下の金額を超える現金や預金を保有していると、超えた部分が処分対象となります。

  • 現金…99万円まで
  • 預金…20万円まで(口座が複数ある場合は合計額)

とはいえ、100万円程度が手元に残れば、生活に支障はないはずです。現金や預金の差し押さえを回避したいからといって、財産隠しや浪費で使ってしまうことは自己破産が失敗する原因になりますので、厳に慎むべきです。

銀行口座の凍結に注意

借入先に銀行がある場合、自己破産の準備段階から口座を凍結される恐れがあります。銀行は自己破産の準備に入っていることを知ると、口座内の残額と借入額とを清算後、それでも足りなかった金額を債権額として届け出ることがほとんどです。

もし、年金が振り込まれた直後に口座凍結されてしまうと、取り返すのが非常に困難となります。これを回避するためにも、年金は自己破産の準備前に引き出してしまうか、振込先を借入のない銀行の預金口座に切り替えましょう。

それ以外にも、年金は現金で受給する方法があります。日本年金機構に届け出ることで、直接振込みではなく「支払い通知書」が自宅に送られてきます。この支払い通知書と年金手帳を郵便局に持参すると、その場で現金として受け取ることができます。

税金の滞納に注意

自己破産では公的年金が差し押さえられることはありません。しかし、税金を滞納している場合、市区町村はたとえ公的年金でも、強制的に差し押さえることができてしまいます。

実際に市区町村が税金徴収の名目で年金を差し押さえるケースは報告されています。

また、税金というのは借金とは違い、自己破産による免除の対象にはなっていません。「非免責債権」といって、自己破産をしても支払い義務が残ってしまうのです。

税金の滞納がある方は、そのまま放置するのではなく市区町村役場の担当課に相談し、無理のない範囲で分割払いができないか相談してみましょう。

市区町村役場は、滞納を放置さえしていなければ、いきなり差し押さえをしてくるようなことはまずありません。

年金担保貸付に注意

年金担保貸付は、その名前のとおり年金を担保に貸し付けを行う制度です。年金担保貸付を利用している方は、すでに経済的に破綻し、返済苦に陥っている方も多く、何度も利用経験があるという方は多いのではないでしょうか。

しかし、年金担保貸付は税金と同様に、自己破産しても免除がされない支払いです。もし自己破産を検討しているのであれば、免除の対象となっている借金の返済を優先するのではなく、年金担保貸付の返済を優先するようにしましょう。

なお、現在、年金担保貸付は新規受付を停止しています。年金担保貸付に注意しなければならない方は、令和4年3月以前に貸し付けを受けていた方のみです。

年金以外の財産に注意

自己破産で年金が差し押さえられないとはいっても、「年金受給者の財産は差し押さえられない」という意味ではありません。年金受給者であっても、先ほどご説明した現金・預金の他にも、下記のような評価額が20万円を超える財産があれば、原則として自己破産すると処分対象となります。

  • 不動産
  • 車、バイク
  • 生命保険
  • 株式などの有価証券
  • 貴金属や骨董品

特に、年金受給者の方であれば、生命保険に長年加入している方も多いのではないでしょうか。個人年金保険と同様、生命保険も解約返戻金が20万円を超える場合には、原則として自己破産手続きで解約され、全額が差し押さえられてしまうことに注意が必要です。

自己破産しても年金の支払い義務は無くならない

年金受給前の方が自己破産する場合には、裁判所で免責が許可されても公的年金の支払い義務は免除されないことに注意しなければなりません。

なぜなら、法律上、年金の支払い義務は納税義務と同じように「非免責債権」とされているからです。したがって、未納の年金がある場合に放置すると、年金事務所によって給与や預金、その他の財産を差し押さえられる恐れがあります。

また、年金の支払い義務が非免責債権である以上、今後の年金も従来どおりに支払っていかなければなりません。これは、自己破産手続き中も同様です。自己破産を申し立てるときには借金の返済はストップしますが、年金は借金ではありませんので、支払いを継続する必要があるのです。

どうしても年金を支払う余裕がない場合、公的年金については「免除」および「納付猶予」の制度がありますので、年金事務所で手続きをしましょう。未納のまま放置せず、免除または納付猶予を認めてもらえば、その期間は年金の受給資格期間に算入されます。

つまり、未納のままでは将来に年金を受給できなくなりますが、免除または納付猶予が認められると、受給額は減るものの、受給できるようになるのです。余裕ができたら、後から「追納」することにより、満額受給できるようにすることも可能です。

未納の年金をすぐに支払えない場合も、年金事務所に相談しましょう。誠意をもって相談すれば、突然、差し押さえを受けることはまずありません。分割納付の相談をするなどして、少しずつでも支払っていきましょう。

自己破産が不安な方は弁護士・司法書士に相談しましょう

単に年金といっても数多くの種類があり、それぞれ性質が異なっています。もちろん自己破産上の取り扱いも異なることから、どうしても専門的な知識が求められてしまいます。

また、債務整理というのは、個々の収入や保有財産、借入総額によって適正となる手続きが異なります。そしてこの適正な手続きというのは、個人で判断できることではなく、専門家の目線がどうしても必要になります。

「もう自分には自己破産しかない…」と感じていても、自宅やその他の保有財産を手元に残せる可能性はあります。個人再生や任意整理といった手続きによって、財産を残したまま借金を整理できる可能性は十分にあります。

お金の問題は非常にデリケートであるため、自己破産すると年金を受け取れなくなるといったように、ネガティブに捉えている方が多いのも無理はありません。

そういった不安を取り除くのも、弁護士や司法書士といった専門家の役目です。自己破産が不安な方は、まず一度相談してみてはいかがでしょうか。

まとめ

自己破産をしても厚生年金や国民年金といった、公的年金が差し押さえられる心配はありません。確定給付企業年金や確定拠出年金といった、企業年金も同様です。

このように自己破産には、自由財産といって生活に必要と判断される財産は失うことなく手続きを進めることができます。しかし、それ以外の高価な財産については、自己破産することで強制処分の対象になってしまいます。

中には自宅など、どうしても手放したくない財産がある方も多いのが現実です。そういった方は、自己破産ではなく個人再生や任意整理といった手続きを視野に入れてみましょう。

とはいえ、どの手続きが適正かについて個人で判断するのは難しいため、弁護士や司法書士への相談を強くおすすめします。

自身に合った手続きを見つけ、借金に悩まされない日々を手に入れましょう。

メインの執筆者かつ9312

元弁護士。関西大学法学部卒。15年にわたり、債務整理、交通事故、相続をはじめとして、オールジャンルの法律問題を取り扱う。
債務整理では、任意整理、個人再生、自己破産の代行から過払い金返還請求、闇金への対応、個人再生委員、破産管財人、法人の破産まで数多くの事案を担当経験する。

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