借金の時効を成立させるにはどうすれば良いのか?時効が完成するまでの流れについて解説

借金の時効を成立させるにはどうすれば良いのか?時効が完成するまでの流れについて解説
この記事でわかること
  • 時効が完成するには多くの条件がある
  • 時効制度にはメリット・デメリットがある
  • 時効を成立させる全体の流れについて

時効制度の存在自体は多くの人が知っていることです。しかし、実際に時効によって債務を免れた経験がある方は少ないと思います。「時効を利用したいがどうすれば良いのかわからない」と言う方も多いのではないでしょうか。

この記事では、借金の時効を成立させる方法、および時効完成までの流れについて詳しく説明します。

借金の消滅時効とは何か?

消滅時効とは、「債権者が一定期間権利を行使せずに放置していた場合、その権利を失う」という民法上の制度のことです。つまり、債務者の側から見ると、債務(主に借金)が帳消しになるということを意味します。

時効によって借金がなくなれば、債務整理などの他の手続きを使うことなく、さらに無条件で、借金の重荷から開放されます。借金を抱えているのなら、是非とも知っておきたい仕組みです。

借金の消滅時効完成の条件とは?

時効と聞くと、「ただ時間が経てば借金を支払わなくても良くなる」と想像している方もいるかもしれませんが、単に時の経過を待っているだけでは時効は完成しません。実は時効の完成のためには大きく3つのステップを踏み、条件をクリアする必要があります。

【時効完成までの流れ】
  1. 時効期間の経過
  2. 時効の完成猶予事由・更新事由がない
  3. 時効の援用

STEP 1 時効期間の経過

時効の完成のためには、法定の時効期間が経過することが必要です。民法166条1項は、次のように時効期間を定めています。

  1. 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき
  2. 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき

ただし、これは改正民法での規定であり、改正民法が施行された2020年4月1日以降に成立した債権に適用されるものです。

それ以前に成立した債権に関しては、旧民法および旧商法の規定が適用されます。旧民法と旧商法では、時効期間は次のように定められていました。

  1. 商事債権は、5年間行使しないときは消滅する (旧商法522条)
  2. 債権は、10年間行使しないときは消滅する (旧民法167条1項)

商事債権とは、旧商法の規定によれば、「商行為によって生じた債権」のことを言います。商行為とは、当事者の少なくとも一方が商人であるような取引のことを指し、例えば、銀行や消費者金融から借金をすることは「商行為」に該当します。

しかし、信用金庫などは商法上の商人ではないとされるので、そこから借金をしても「商行為」には該当しません。

また、基本的に商事債権以外の債権は全て民法上の債権に該当します。例えば、親族や友人からの借金などは民法上の債権の一種です。

時効の起算点

時効期間として規定されている「5年間」や「10年間」は、どの時点から計算するのでしょうか。この、いわゆる時効の起算点は、借金をした際の契約内容によって変わってきます。

契約で返済期日を決めている場合

返済期日の同意があるケースでは、返済期日の翌日から時効の経過が始まります。

契約で不確定返済期日を決めている場合

返済期日が不確定期日の場合は、それが確定した期日の翌日から時効の経過が始まります。

例えば、Aさんが就職したら返済をする、という内容の契約の場合、実際にAさんが就職した日の翌日から時効が計算されるということです。

契約で返済期日を決めていない場合

返済期日の同意がないケースでは、契約の翌日から時効の経過が始まります。

時効期間が経過しているかどうか忘れてしまった場合

借金をしてから時間が経っていると、いつ借金をしたのか、どの時点が時効の起算点なのかが分からなくなってしまうこともあると思います。そんな時には、信用情報機関に問い合わせて、信用情報を閲覧することで借金関係の情報を確認することができます。

金融機関や貸金業者は、信用情報機関に登録して、貸金業務や債務者情報の管理をしていますが、債権者もこの情報にアクセスすることが許されているのです。借金額や借金をした日、時効の起算点などを知ることができます。

ただし、借金をした本人しかアクセスすることができないことに注意しましょう。

STEP 2 (1)時効の完成猶予事由がないこと

時効の完成猶予事由とは、時効期間が完成するのを妨げる出来事のことを言います。完成猶予は債権者が権利行使の意思を表明した時に生じ、これによってそれまで進行していた時効は一度停止して、一定期間は時効が完成しなくなります。

ちなみに、旧民法では、「時効の中断」と呼ばれていました。時効の完成猶予事由には次のようなものがあります。

【時効の完成猶予事由】
  • 裁判上の請求
  • 差押え・仮差押え・仮処分
  • 催告

裁判上の請求

債権者から裁判上の請求がなされることは時効の完成猶予事由の一つです。具体的には支払督促・和解・調停の申し立てや貸金返還請求訴訟の提起があります。

裁判上の請求がなされた場合、訴状や支払督促申請書などの書類が送られることによって債務者に通知されます。

差押え・仮差押え・仮処分

差押え・仮差押え・仮処分とは、借金の返済を滞納している場合に、債権者によって財産が差し押さえられ、処分不可能になることを言います。これによって、時効は中断します。

催告

催告とは、債権者からの借金の返済を求める意思表示のことを言います。催告は債権を回収するという権利行使であるため、時効は中断します。

STEP 2 (2)時効の更新がないこと

時効の更新とは、それまで進行していた時効期間がリセットされ、また0から期間の計算が始まることです。更新事由には次のようなものがあります。

【時効の更新事由】
  1. 判決の確定
  2. 承認

判決の確定

貸金返還請求訴訟の提起などによって債権者が裁判を起こし、その判決が確定すると、時効は更新します。

仮に訴訟を提起されたことを知らなくても、裁判はお構いなく進行して債権者の勝訴という結果になるため注意が必要です。

例えば、自宅に訴状が送達されたのにそれを確認しなかった、読むことなく処分した、同居している家族が勝手に捨ててしまっていた、といったことがよくあるケースです。時効完成に関わることですので、知っておきましょう。

承認

承認とは、債務者の側から債務が存在することを認めることを言います。債務の存在を認める旨を債権者に通知することはもちろん承認に当たりますが、借金のうちの一部でも返済すれば、承認がなされたとみなされます。

金融機関や貸金業者は承認の効果を発生させるために、債務者に対して「払えるだけでもいいから返済してほしい」などと持ちかけてきます。これに応えて借金の一部でも返済してしまうと、時効は更新されてしまうので注意しましょう。

STEP 3 時効の援用がなされていること

民法は、「時効は当事者が援用をしなければ、これによって裁判所は裁判をすることができない」と定めています。

つまり、時効は、「援用」という手続きをとることによって初めて成立し、債権者に対して主張することができるようになるということです。ただ借金を放っておくだけでは時効は完成しないのです。

援用の手続きの流れ

時効の援用の具体的な手続きは次のような流れになっています。

  1. 債権調査
  2. 内容証明郵便で時効援用通知書を債権者に送付
  3. 債権者の受領
  4. 時効完成

債権調査においては、現在の借金額、返済期日、契約内容などを全て把握し、現時点で時効期間が満了しているのかどうかを調べます。その際、不明な情報があれば、債権者や信用情報機関に問い合わせる必要があります。

次に、配達証明付き内容証明郵便で時効援用通知書を債権者に送付します。これによって時効援用の意思表示をしたことが郵便局に記録されて、援用をしたことの証明として使えるようになります。

しかし、債権調査も時効援用通知書の作成・送付も経験に基づいた対処法や専門的な知識が要求される手続きですので、素人である債権者が一人でやろうとしても、上手くいかない事や、そもそもやり方がわからないことが多いです。

ですから、時効援用の手続きについては専門家に依頼するのが得策と言えるでしょう。

時効の援用のメリット

時効の援用をする最大のメリットは、借金がなくなることです。しかも、時効期間さえ経過すれば、債務者が特に負担を背負うことなく時効を完成させることができるという点が大きいです。借金を帳消しにできれば、返済の督促も止まり、精神的なプレッシャーからも解放されます。

また、時効の援用によって、基本的にブラックリストから解除されます。借金の返済を滞納すると、貸金業者を通じて、信用情報機関にその情報が「事故情報」として登録されますが、時効の援用が完了すれば、基本的に事故情報は消去されるのです。

このことによって、クレジットカードの発行・ローンの利用・新たな借り入れなどが再びできるようになります。

時効の援用のデメリット

まず、時効の援用をするデメリットの1つが、援用をした相手方の貸金業者との取引ができなくなるということです。時効を援用するというということは、借金を踏み倒すということを意味するので、債権者としては再び踏み倒されることがないように貸し付けを拒否するからです。

ですから、援用の相手である貸金業者・金融機関から借り入れをしたり、ローンを組んだりすることはもはや不可能になることは覚悟する必要があります。

もう一つのデメリットとして、もしも時効が完成しなかった場合に多額の返済を求められるというリスクの存在が挙げられます。時効が完成するには、時効期間である5年または10年間が経過する必要があります。

そして、この期間は返済を滞納するわけですから、利息や遅延損害金が積み重なっていきます。もちろん時効の援用が成功すればいいですが、完成猶予や更新によって援用が失敗すれば、それまでに溜まった膨大な利息や遅延損害金を支払わなくてはならなくなります。このようなリスクがあるということを覚えておきましょう。

メリットデメリット

①     借金を帳消しにできる

②     ブラックリストから解除される

①     援用の相手方との取引ができなくなる

②     時効援用が失敗した時、返済額が膨大になる

まとめ

時効制度を利用すれば、負担なく借金をなくすことができ、債務問題解決の効果は大きいと言えます。一方で、時効完成のためには条件があり、また債権者も時効の成立をできるだけ防ごうとするため、実際に時効を成立させることは難しいです。さらに、時効の完成に失敗した場合、借金の支払額が増加してしまうリスクもはらんでいます。

ですから、時効の完成だけを期待して待ち続けるという方法はあまり得策とは言えません。そうするよりは、任意整理や個人再生などの債務整理も検討しながら借金問題を解決していく方が現実的であり、おすすめです。

時効制度の利用を考えている方やどういった方法で借金を解決しようか迷っている方は、まずは弁護士や司法書士などの専門家に相談してみましょう。あなたに最適なプランを提案してくれるはずです。

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