タイトルとURLをコピーしました

当サイトはPRを含みます。

借金の時効援用のやり方は?時効にかかった借金を確実に消滅させるための注意点

借金の時効援用のやり方は?時効にかかった借金を確実に消滅させるための注意点
監修田島 聡泰 (たじま あきひろ) / シン・イストワール法律事務所

シン・イストワール法律事務所は借金問題に注力する法律事務所です。事務所を開設してから、これまで任意整理、個人再生、自己破産、過払い金請求など様々なケースの借金事案に対応してきました。

シン・イストワール法律事務所は借金問題に注力する法律事務所です。事務所を開設してから、これまで任意整理、個人再生、自己破産、過払い金請求など様々なケースの借金事案に対応してきました。

この記事でわかること
  • 借金の消滅時効援用が自分でできるようになる
  • 消滅時効に関する基礎知識が得られる
  • 自分で時効援用するときの注意点が分かる
  • 確実に借金を時効消滅させるには専門家への依頼が望ましい

借金があっても、返済しないまま長期間が経過すると時効によって返済義務がなくなることがあります。ただし、借金が自動的に消えるわけではありません。返済義務を消滅させるためには、時効援用を行う必要があります。

借金の時効援用は、さほど難しい手続きではないので自分で行うことも可能です。

しかし、正しく手続きしなければ時効援用が無効となり、借金がそのまま残ってしまう可能性もあります。不安な場合は、弁護士または司法書士といった法律の専門家に相談する方がよいでしょう。

この記事では、借金の消滅時効援用の正しいやり方を分かりやすく解説していきます。自分で時効援用を行うときの注意点もご説明しますので、参考になさってください。

時効援用とは

まずは、時効援用とは何かということを正確に知っておきましょう。

時効を援用しなければ借金は消滅しない

借金などの債務には時効があり、一定の期間が経過すると支払い義務が消滅します。このことを「消滅時効」といいます。

ただし、消滅時効が完成しても、それだけでは債務そのものは消滅しません。債務者から債権者に対し、「時効が完成したので支払いません」という意思表示をしなければ、確定的に債務から免れることはできません。

この意思表示のことを「時効援用」といいます。

借金の消滅時効期間

借金の消滅時効期間は、最後の取引(通常は返済)のときから5年です。

ただし、2020年3月31日以前に発生した債務については、以下の時効期間が適用されます。

  • 貸金業者からの借金…5年
  • 個人からの借金…10年

貸金業者からの借金の消滅時効期間は「5年」と覚えておけば足りますが、友人・知人・親戚など個人からの借金の消滅時効期間は借り入れの時期によって異なるので、ご注意ください。

時効の更新・完成猶予には要注意

消滅時効には「更新」と「完成猶予」というものがあります。

更新とは、それまでに進行していた時効期間がリセットされ、新たにゼロから時効期間が進行し始めることです。以下の事情があると、その時点で時効が更新されます。

  • 裁判上の請求
  • 差押え
  • 承認

時効完成後でも、債権者からの請求を受けて一部でも債務を支払ったり、「支払います」と約束したりすると承認したことになりますので、注意が必要です。

また、債権者から催告を受けると、その後の6ヶ月間、時効の完成が猶予されます。催告とは、簡単にいうと裁判外での請求のことです。

例えば、時効完成直前に債権者から催告状を受け取ると、そのときから6ヶ月が経過するまでは時効が完成しないことになります。

借金の時効援用のやり方

借金の時効援用のやり方は、それほど複雑ではありません。以下の流れで手続きを進めれば、時効にかかった借金が消滅します。

  1. 信用情報を確認する
  2. 時効援用通知書を作成する
  3. 内容証明郵便で通知書を送付する

信用情報を確認する

まずは、本当に時効が完成しているかどうかを確認する必要があります。

業者からの借金であれば、信用情報機関に登録されている情報を確認することです。借入日や借入金額、返済状況も登録されているので、自分の信用情報を照会することで時効が完成しているかどうかを確認できます。

照会は各信用情報機関(CICJICC全銀協)のHPから申し込めます。

相手が個人の場合は信用情報機関には登録されませんので、自身の振込履歴などで確認しましょう。

時効援用通知書を作成する

時効援用のやり方に決まりはなく、口頭で「時効を援用します」と伝えるだけでも、法律上は時効援用の効果が生じます。

ただし、口頭で伝えるだけでは証拠が残らないため、債権者から裁判を起こされた場合には対抗できません。

そのため、時効援用通知書という書面を作成することが必要です。時効援用通知書には所定の事項を漏らさず、かつ正確に記載しなければなりません。

内容証明郵便で通知書を送付する

時効援用通知書を作成するだけでも、まだ証拠として十分ではありません。そこで、一般的には内容証明郵便で通知書を作成し、債権者宛に送付します。

こうしておくことにより、通知書の内容と、債権者がその通知書をいつ受け取ったのかを郵便局が公的に証明してくれます。時効援用したことの強力な証拠となります。

時効援用通知書の書き方

時効援用通知書に書くべき事項と書き方は、以下のとおりです。

時効援用の日付

通知書に記載する日付は、作成日や送付日を示すだけでなく、「時効援用をした日」を示すという重要な意味を持つものです。

時効援用は、当然ながら時効完成後に行わなければなりません。日付が記載されていなければ、債権者から「時効完成前に作成された可能性があるから無効だ」と反論されるおそれがあります。

時効援用通知書には、必ず日付を年月日で記載しましょう。年号は西暦と元号のどちらでも構いません。

債権債務を特定する情報

どの債権債務について時効援用するのかが書面上で特定されていなければ、時効援用の効果は生じません。以下の情報を正確に記載しましょう。

  • 債権者の名称、住所(法人であれば正確な商号と本店所在地)
  • 債務者の氏名、住所、生年月日、契約番号や会員番号
  • 債権債務の内容(借入年月日、借入金額、最終の返済年月日)

同一の債権者に対して複数の借金がある場合には、どの借金について通知するのかを特定することが特に重要となります。

時効が完成していること

時効援用をするためには、時効が完成していることが絶対条件となりますので、その旨を明確に記載します。

通常は時効の完成日を示して、「○年○月○日の経過をもって、消滅時効が完成した」と記載します。時効完成の正確な年月日に自信がない場合は、「遅くとも○年○月○日までに消滅時効が完成した」という記載でも構いません。

消滅時効を援用すること

時効の完成を明示したら、その後に消滅時効を援用する旨を記載します。つまり、時効援用の意思表示を書面上で行うということです。

書き方は、時効完成の記載に続けて、「私は、貴社に対し、本通知書をもって上記貸金返還請求権の消滅時効を援用する」と記載すれば足ります。

債務を承認しないこと

以上の事項を漏れなく正確に記載すれば時効援用の効果が生じますが、念のために、「本通知書によって債務承認するものではない」という一文を入れておきましょう。

時効援用通知書には債権債務の内容を記載するため、「時効の完成」や「時効の援用」の点で記載ミスがある場合には、債権者から「債務を承認した」と主張されるおそれがあるからです。

事故情報の削除依頼

必須項目ではありませんが、「信用情報に登録された事故情報を削除してください」という一文も入れておくことをおすすめします。

借金が時効で消滅すると信用情報機関によっては事故情報が削除されることになっていますが、債権者が削除手続きを忘れてしまい、ブラック情報が残ってしまう可能性もあります。債権者に念を押す意味で、この一文を入れておきましょう。

時効援用通知書のテンプレート

ここでは、時効援用通知書のひな形をご紹介します。ご自身で時効援用通知書を作成する際の一例として、参考になさってください。

時効援用通知書

令和4年〇月〇日

東京都〇〇区〇〇 〇〇ビル〇階
株式会社〇〇 御中

千葉県〇〇市〇〇町〇番〇号
〇〇 〇〇 印
電話番号 〇〇〇-〇〇〇-〇〇〇〇

前略 貴社の私に対する下記の債務については、最終弁済日の翌日から既に5年以上が経過しており、令和4年〇月〇日をもって消滅時効が成立しています。

【債務の表示】
契約番号
〇〇〇〇―〇〇〇〇―〇〇〇〇
債務者住所
千葉県〇〇市〇〇町〇番〇号
債務者氏名
〇〇 〇〇
生年月日
平成〇年〇月〇日
当初借入日
平成〇〇年〇月〇日
当初借入額
〇〇万円

私は、本通知書をもって、上記債務の消滅時効を援用します。

つきましては、本通知書受領後、速やかに信用情報機関へご連絡の上、事故情報を削除されますようお願いいたします。

なお、本通知書は債務の存在を承認するものではありませんので、念のため申し添えます。

草々

内容証明郵便を送付する方法

内容証明郵便の書き方と送り方についても、細かな決まりがあります。ここでは、主な決まりをご紹介します。

様式

使用する用紙は、以下のとおりです。

  • 手書きで作成する場合…内容証明専用の原稿用紙を購入する
  • パソコンで作成する場合…無地のA4用紙にプリントアウトする

用紙1枚に記載できる文字数と行数は、以下のとおりに定められています。

【横書きの場合】
1行に13字以内…40行まで
1行に20字以内…26行まで
1行に26字以内…20行まで
【縦書きの場合】
1行に20字以内…26行まで

時効援用通知書の場合、通常は1枚で足ります。

押印はなくても有効ですが、重要な通知書なので押印しておくことをおすすめします。(認印で構いません。)

発送方法

内容証明郵便を発送するときは、同じ様式・同じ内容の書面を3部作成し、送付用の封筒(差出人と受取人の住所・氏名を記載)と一緒に郵便局の窓口に持参します。

あとは郵便局員の指示に従い、料金を支払えば発送が完了します。なお、書面は1部が債権者へ送付され、1部は郵便局で保管され、残りの1部は差出人控えとして交付されます。控えは重要な証拠となりますので、保管しておきましょう。

時効援用にかかる費用

時効援用にかかる費用は、自分で行うか、弁護士または司法書士に依頼するかで以下のように異なります。

  • 自分で通知する場合:2千円
  • 弁護士・司法書士に依頼する場合:3万~10万円

自分で通知する場合

自分で時効援用通知書を作成し、送付する場合は、内容証明郵便にかかる実費だけで足ります。

内容証明郵便は「一般書留」とする必要があり、時効援用通知の場合は「配達証明」のオプションを付けることも必須です。一般的には「速達」のオプションも付けます。

通常、以上合計で2,000円以内に収まります。

弁護士・司法書士に依頼する場合

時効援用を弁護士または司法書士に依頼する場合は、上記の実費の他に依頼費用が必要となります。

依頼費用の金額は、事案の内容や依頼する事務所によって異なりますが、おおよそ3万~10万円程度です。

自分で時効援用をするときの注意点

自分で時効援用をすれば費用を安く抑えることができますが、以下の点には注意が必要です。

  • 時効完成の判断が難しいことがある
  • 債権者に対抗措置をとられることがある
  • 通知書の記載が不十分だと無効となる
  • 時効援用が成功したかの確認が難しい

時効完成の判断が難しいことがある

消滅時効は催告によって完成が一時猶予され、裁判上の請求や承認によって更新されます。債務者本人は時効が完成したと考えていても、実際にはまだ完成していないケースが珍しくありません。

本当に時効が完成しているかどうかを正しく判断するためには、専門的な知識が必要となることもあります。

債権者に対抗措置をとられることがある

時効が完成しているかどうかを確認するため債権者に連絡をする人もいますが、そうすると債権者が時効の完成を阻止するために裁判などの対抗措置をとってくる可能性があります。

また、時効が完成していても債務者の不知をよいことに返済を請求してくる貸金業者も少なくありません。時効完成後でも債務の一部を返済したり、返済の約束をしたりすると承認したことになり、新たに時効期間が経過するまで時効援用ができなくなってしまいます。

通知書の記載が不十分だと無効となる

時効援用通知書の記載内容に不備や不足があると、時効援用の意思表示が無効となり、借金は消滅しません。その状態で債権者から返済を要求されると、承認してしまうおそれがあります。

時効援用が成功したかの確認が難しい

時効援用通知書を正しく送付しても、通常は債権者から何も反応はありません。しかし、何も連絡がなければ債務者は不安になってしまうものです。

正規の貸金業者なら、正しい時効援用通知書を受け取った後に返済を請求してくることはありません。しかし、手違いで請求された場合、自信を持って対応できないこともあるでしょう。

時効援用を弁護士・司法書士に依頼するメリット

時効援用を弁護士または司法書士といった法律の専門家に依頼すれば、以下のメリットが得られます。

  • 時効が完成しているかどうかを正しく判断してもらえる
  • 正確な時効援用通知書を作成してもらえる
  • 内容証明郵便の送付を代行してもらえる
  • 債務の承認をしてしまわないように、アドバイスが受けられる
  • 万が一、時効を主張できない場合でも他の解決方法を提案してもらえる

「自分で時効援用を行うのは難しい」、「一人で時効援用を行うのは不安だ」このように思われる方は、若干の費用はかかりますが専門家に依頼し、万全を期した方がよいでしょう。

【関連記事】:時効援用に強い無料相談できる弁護士・司法書士

債権回収会社からハガキが来た場合には時効を確認する

借金を滞納すると債権回収会社からハガキが届くことがあります。

債権回収会社は債権(借金を請求する権利)を買取った上で取り立てをしてくることがあります。このような借金には時効を迎えている場合もありますので、その場合は債権回収会社相手に時効援用通知書を送付しましょう。詳細は個別記事を参照してください。

まとめ

借金の消滅時効援用のやり方はさほど難しくないとはいえ、いざ自分で行おうとすると、さまざまな疑問や不安が出てくると思います。

そんなときに債権者から返済を請求されると、場合によっては債務を承認してしまい、時効援用ができなくなってしまうおそれがあります。

少しでも不安があれば、弁護士・司法書士の専門的なアドバイスを受けましょう。そして、時効援用の手続きを弁護士・司法書士に依頼すれば、借金から解放されて安心できることでしょう。

メインの執筆者かつ9312

元弁護士。関西大学法学部卒。15年にわたり、債務整理、交通事故、相続をはじめとして、オールジャンルの法律問題を取り扱う。
債務整理では、任意整理、個人再生、自己破産の代行から過払い金返還請求、闇金への対応、個人再生委員、破産管財人、法人の破産まで数多くの事案を担当経験する。

時効援用
24時間365日・全国対応・無料相談 債務整理に強い
弁護士・司法書士はこちら