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個人間借金で一括請求を受けたときの対処法は?返済義務がないケースも解説

個人間借金で一括請求を受けたときの対処法は?返済義務がないケースも解説
この記事でわかること
  • 個人間借金で一括請求を受けても返済を拒否できるケースがある
  • 個人間借金で適法な一括請求を放置すると裁判や差し押さえのリスクがある
  • 個人間借金も債務整理の対象となる
  • 債務整理をしても督促をやめない個人に対しては弁護士・司法書士による対応が有効

友人や知人、先輩・後輩、職場の上司や同僚、交際中の男女間など、個人間で借金をしている方も多いことでしょう。

個人間借金では、最初は「お金があるときに返してもらえばいい」と言われていたのに、急に一括請求をされて困ってしまうケースがよくあります。

貸した側にとっては早く全額を返してほしいと考えるのも当然ですが、一括請求が認められるためには法律上の条件を満たす必要があります。

この記事では、個人間借金の一括請求を拒否できるケースと拒否できないケースを紹介し、拒否できないケースで返済できない場合の対処法についても解説します。

個人間借金の返済義務について

個人間借金も貸金業者からの借金と同様、法律上は「消費貸借契約」に当たります。

消費貸借契約は、金銭その他のものを、後に返還することを相手に約束して受け取ることで成立します。したがって、借りたお金は当然ながら返さなければなりません。

ただし、いつ・いくら返す必要があるのかについては、個人間借金と貸金業者からの借金では異なることも多いです。

以下では、個人間借金における返済義務について、借用書がある場合とない場合に分けて詳しく解説します。

借用書がある場合

個人間でもお金の貸し借りをするときには、借用書を書くことがあります。借用書は、法的には「金銭消費貸借契約書」に当たるものです。

借用書に何を記載するのかは当事者の自由ですが、記載したことは守るべき法律上の義務が生じます。通常、借用書には以下の事項が記載されます。

  • お金を借りた年月日
  • 借りた金額
  • 返済期限
  • 利息の利率(利息の約束をする場合)
  • 遅延損害金の割合(遅延損害金の約束をする場合)
  • 借主の住所、氏名、押印

返済期限を定めた場合は、借主の利益のために定めたものと解釈されます。

分かりやすくいうと、貸主は返済期限が到来するまで返済を請求できないということです。

借用書がない場合

借用書を書いていない場合も、基本的に借主は借用書を書いた場合と同じ返済義務を負います。法律上、契約は口約束で成立するため、口頭で相手と合意した内容に従って返済義務が生じるのです。

ただし、口約束だけでは当事者間で「言った・言わない」の争いが生じやすいです。争いが生じた場合は、返済を求める側が「言った」ことを証明しなければならないのが法律上のルールです。

例えば、「○月○日までに一括で返済する」という返済期限が問題となった場合には、その約束をした事実を貸主側が証明する必要があります。証明できない場合、借主はただちに一括で返済する必要はありません。

なお、個人間では「もらったお金」の返済を要求されるケースも多いです。お金をもらった場合は消費貸借契約ではなく「贈与契約」が成立しているので、返済義務は生じません。

お金を渡した側が返済を求めるのであれば、あげたのではなく「貸した」事実を証明する必要があります。

個人間借金で一括請求が有効なケース

個人間借金で一括請求されるケースとしては、次の3つの場合が挙げられます。これらのケースでは、貸主からの一括請求は正当な要求なので、借主は返済を拒否できません。

  • 返済期限が到来した場合
  • 返済期限を定めていない場合
  • 期限の利益を喪失した場合

返済期限が到来した場合

一括返済の期限を当事者間で定めていて、その期限が到来したときは、当然ながら一括で返済しなければなりません。

交渉によって返済を延期できる余地はありますが、交渉に応じるかどうかは貸主の意向次第です。

返済期限を定めていない場合

返済期限を定めていない場合、貸主はいつでも「相当の期間」を定めて返済を請求できます(民法591条1項)。

「相当の期間」とは、お金を準備するために通常必要な期間のことであり、一般的には1週間程度と考えられています。

したがって、返済期限を定めていない個人間借金で「今すぐ全額返せ」と言われた場合は、1週間程度の猶予を求めることはできます。

期限の利益を喪失した場合

分割払いの約束をしている場合は、期限の利益を喪失すると一括請求されます。

期限の利益とは、毎月の返済日までに所定の金額を支払えば、残りの借金はまだ支払う必要がないという、借主にとっての利益のことです。

しかし、分割払いの借金では契約に「期限の利益喪失条項」が盛り込まれることがあります。期限の利益喪失条項とは、「借主が分割金の支払いを○回以上怠ったときは期限の利益を失い、借入残高全額をただちに支払うこととする」といった取り決めのことです。

借金の分割返済を滞納し、契約で取り決めた滞納回数に達すると期限の利益を失うため、貸主から一括請求されることになります。

なお、民法137条では、以下の場合にも借主が期限の利益を失うこととされています。

  • 借主が破産手続開始の決定を受けたとき。
  • 借主が担保を滅失させ、損傷させ、または減少させたとき。
  • 借主が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。

ただ、実際に一括請求で返済を迫られるのは、借金を滞納して期限の利益喪失条項に該当したケースが圧倒的に多いです。

個人間借金で一括請求されても返済を拒否できるケース

個人間借金では、法的には一括請求が認められないにもかかわらず、貸主が感情的になって一括請求してくることもよくあります。

以下のケースでは、一括請求されても返済を拒否することが可能です。

  • 返済期限が未到来の場合
  • 期限の利益喪失条項がない場合
  • 消滅時効が成立している場合
  • 法外な利息を要求された場合
  • 度を超えた取り立てを受けた場合

返済期限が未到来の場合

返済期限を定めた場合は、当然ながら返済期限が到来するまで一括請求に応じる必要はありません。

よくある事例として、個人間借金で借用書を書かず、「返済は3ヶ月後でよい」と口約束したにもかかわらず、貸主が1ヶ月後に「お金が必要になったから」などの理由で一括請求をしてくるようなケースが挙げられます。

このようなケースでは、基本的に貸主が返済期限を1ヶ月後とする約束をした事実を証明しない限り、一括請求は認められません。

しかし、貸主が「返済期限は定めてない」と主張した場合は、借主が返済期限を3ヶ月後とする約束をした事実を証明しなければ一括返済を拒否できません(1週間程度の猶予を求めることは可能です。)。

このようなトラブルは借用書があれば防げるため、借金をするときは適切な内容の借用書を書いておくことが借主にとっても大切です。

期限の利益喪失条項がない場合

個人間借金では、分割払いの借金で借用書を書いたとしても、期限の利益喪失条項が盛り込まれていないケースもあります。

その場合、返済期限が既に到来した分(滞納している分)は一括で支払う必要があります。しかし、返済期限が未到来の分については期限の利益が維持されるので、一括請求を受けても支払いを拒否できます。

借金の滞納を解消できない以上は一括請求されてもやむを得ない、というイメージをお持ちの方は多いことでしょう。しかし、法律を正しく知っていれば、このように一括返済を拒否できる場合もあるのです。

消滅時効が成立している場合

個人間借金にも消滅時効があります。消滅時効が成立している場合は、一括請求されても時効を援用することによって返済を拒否できます。

個人間借金の消滅時効期間は、以下のように借入の時期によって異なります。

借入の時期 消滅時効期間
2020年3月31日以前 10年
2024年4月1日以降 5年

時効期間がスタートする時期は、以下のとおりケースによって異なります。

ケース 時効期間の開始時期
一括払いの借金
(返済期限を定めた場合)
返済期限の最終日
一括払いの借金
(返済期限を定めていない場合)
借入日
分割払いの借金 最後に返済したとき
(一度も返済していない場合は、初回の返済日)

ただし、貸主が支払督促や裁判をした場合や、借主が債務を承認した場合などでは、時効期間が更新されることに注意が必要です。更新とは、それまで進行していた時効期間がリセットされることです。

例えば、一括請求されたときに「必ず支払うので待ってください」などと債務の存在を認めるような言動をすると、債務を承認したことになります。

その場合は、債務を承認したときから改めて時効期間が経過するまで消滅時効は成立しません。

消滅時効が成立した場合には、「援用」という手続きが必要です。援用とは、相手方に対して、時効成立を理由として借金を支払わない旨の意思表示をすることです。

一般的には、「消滅時効援用通知書」という書面を内容証明郵便で作成し、貸主へ送付します。

法外な利息を要求された場合

貸主から法外な利息を要求された場合には返済を拒否できる可能性があります。

なぜなら、個人間借金でも年109.5%を超える利率による利息の請求は、出資法で犯罪行為として処罰の対象とされているからです。

貸付契約そのものが犯罪行為なので、民事上も公序良俗違反として契約無効となる可能性があります。借入の契約が無効となれば、返済する必要はありません。

ただし、具体的に年何%以上で公序良俗違反となるかの基準は明確ではありません。そのため、法外な利息を要求された場合は、弁護士に相談して対処した方がよいでしょう。

なお、個人間借金にも利息制限法が適用されます。したがって、利息の約束をした場合でも、利息制限法で定められている上限金利(元金に応じて年15~20%)を超える利息の支払いは拒否できます。

度を超えた取り立てを受けた場合

個人的にお金を貸した貸主は、なけなしのお金を取り戻すために厳しい取り立てを行うことも少なくありません。度を超えた取り立ては、違法となります。

個人間借金は、取り立てのルールが法律で定められているわけではありません。しかし、次のような刑罰法規に触れる取り立て行為は、当然ながら禁止されています。

  • 暴行や脅迫を用いて返済を迫る
  • 自宅に上がり込んで居座り、返済するまで退去しない
  • 職場で返済を要求し、業務を妨害する
  • インターネットで個人情報を晒し、「削除してほしければすぐ返済しろ」と迫る

貸主が違法な取り立てをして罪に問われた場合、処分を軽くするために示談を持ちかけてくることがあります。

その場合は、示談の条件として借金の減額や免除を提案して、交渉する余地が出てきます。

個人間借金の一括請求を放置するリスク

個人間借金で適法な一括請求を受けた場合は、無視せず適切に対処する必要があります。一括請求を放置すると以下のリスクが生じるので、注意しましょう。

  • 裁判所から支払督促や訴状が届く
  • 給料などが差し押さえられる
  • 弁護士から督促を受ける

裁判所から支払督促や訴状が届く

貸主は、借主が任意に支払わないとみると、法的措置をとることがあります。法的措置をとられると、裁判所から支払督促や訴状といった書類が届きます。

裁判所から書類が届いたら、必ず速やかに内容を確認してください。その上で、支払督促の場合は異議申立書、訴状の場合は答弁書を、所定の期限までに提出することが重要です。

適切に対処すれば、裁判所で和解協議を行い、分割払いで裁判上の和解が成立する可能性も十分にあります。

給料などが差し押さえられる

裁判所から届いた支払督促や訴状を無視すると、貸主は一定期間の経過後に強制執行の申し立てが可能となります。

強制執行とは、貸主の申し立てによって裁判所が借主の財産を差し押さえ、その財産の中から強制的に債権の回収を図ることが認められる制度です。

借金を滞納したケースでは、主に給料や預金口座が差し押さえの対象となります。突然、これらの財産が差し押さえられると、生活に困窮してしまうおそれもあるでしょう。

弁護士から督促を受ける

場合によっては貸主が債権回収を弁護士に依頼し、弁護士名義で督促状などが届くこともあります。

弁護士からの督促を無視すると、速やかに裁判や差し押さえの手続きを進められてしまう可能性が高いです。そのため、無視せず支払い方法などについて弁護士と交渉することが重要です。

交渉しても返済できそうにない場合は、借主も弁護士に相談して対処した方がよいでしょう。

個人間の借金を一括で返済できないときの対処法

個人間の借金を一括で返済できないときの対処法

一括請求を受けても返済できない場合には、放置せず以下の対処法を検討しましょう。

  • 違法行為で困ったときは警察に相談する
  • 支払い方法について交渉する
  • 債務整理をする

違法行為で困ったときは警察に相談する

度を超えた違法な取り立てを受けたときは、警察に相談するのがおすすめです。

犯罪に該当する取り立てが行われている場合には警察官が駆けつけて、貸主に注意してくれたり、程度によっては逮捕してくれることもあります。

ただし、刑事の問題と民事の問題は別なので、警察が対処してくれたとしても、民事上の借金の返済義務はそのまま残ります。そのため、次の対処法も併せて必要となります。

支払い方法について交渉する

まずは、貸主と支払い方法について交渉してみることです。

すぐに返済できない事情を正直に伝えて誠実に交渉すれば、条件にもよりますが分割払いや支払い延期に応じてもらえる可能性は大いにあるでしょう。

双方が合意すれば、支払い方法はどのような内容にでも変更できます。交渉次第では借金の減額や免除に応じてもらえる余地もあるので、丁寧に交渉しましょう。

債務整理をする

貸主との交渉がまとまらないときは、債務整理がおすすめです。個人からの借金も債務整理の対象となります。

個人の貸主に迷惑をかけたくないのであれば、貸金業者からの借金のみを任意整理することも手です。業者からの借金のみを任意整理して借金総額を減らし、個人からの約束どおり返済を続けることが可能です。

自己破産と個人再生は、任意整理のように個人の貸主を除外して整理することはできません。

債務整理をしても個人からの催促が続く場合の対処法

貸金業者からの借金なら、債務整理をすれば催促が止まります。

しかし、個人の貸主は債務整理に関する法律の知識がなかったり、なけなしのお金を取り戻すために必死になっていたりすることが多いです。そのため、債務整理をしても催促が止まらないこともよくあります。

そんなときは、以下のように対処していきましょう。

  • 自然債務としての返済を約束する
  • 弁護士・司法書士に対応を依頼する

自然債務としての返済を約束する

借金総額が大きい場合は、任意整理による解決は難しいことが多いです。自己破産または個人再生をしなければ解決できないこともあるでしょう。

自己破産と債務整理では、すべての貸主を平等に扱う必要があるため、個人の貸主を除外して申し立てることはできません。そのため、個人の貸主にも迷惑がかかってしまいます。

そんなときは、個人の貸主に対しては手続き終了後に少しずつ返済することを約束するのが有効です。

自己破産や個人再生で減免された借金は、「自然債務」となります。自然債務とは、貸主からは支払いを請求できませんが、借主が任意に支払うのであれば貸主が金銭を受領できる債務のことです。

自己破産や個人再生を成功させ、業者からの借金を減免してこそ個人の貸主への支払い(自然債務として)が可能となることを説明し、理解を求めるようにしましょう。

弁護士・司法書士に対応を依頼する

債務整理をするなら、弁護士・司法書士に対応を依頼するのがおすすめです。

弁護士・司法書士は、借主の代理人としてすべての貸主に対して連絡窓口となってくれます。

もし、依頼後に個人の貸主から催促を受けた場合は、丁重に対応しつつも「弁護士・司法書士の方に連絡してください」と言えば足ります。

法的知識が乏しい個人の貸主に対しても、弁護士・司法書士が事情や債務整理のルールを説明し、理解を求めてくれます。

個人間で対立し続けるよりも、弁護士・司法書士という法律の専門家に対応を任せた方が適切な解決につながるといえます。

個人間借金で一括請求されたときに弁護士・司法書士に依頼するメリット

個人間借金で一括請求されて困ったときは、早めに弁護士・司法書士に相談・依頼することを強くおすすめします。

法律の専門家によるサポートを受けることで、以下のメリットが得られます。

  • 返済義務の有無を判断してもらえる
  • 度を超えた違法な取り立てを受けた場合も警告や被害届のサポートなどをしてもらえる
  • 支払督促や裁判を起こされたときは法的手続きを代行してもらえる
  • 返済ができない場合は最善の解決方法をアドバイスしてもらえる
  • 債務整理の複雑な手続きを一任できる
  • 個人の貸主への対応を弁護士・司法書士に任せることで理解が得られやすくなる
  • 業者からの借金も含めて、借金問題の全面的な解決が期待できる

個人間借金の問題で弁護士・司法書士に相談・依頼するメリットは大きいといえるでしょう。

まとめ

個人間借金では、貸主も借主も法的知識が乏しいことが多いでしょう。そのため、貸主は無闇に一括請求をしがちですし、借主は「返済を拒めないけれど返済する余裕はない」と考え、窮地に追い込まれてしまいがちです。

一括請求されて困ったときは、まず弁護士に相談し、状況を法的に整理して適切な解決方法を検討することが大切です。

解決方針が決まれば、具体的な手続きは弁護士に依頼して一任できます。弁護士の力を借りて、個人間借金の悩みを解決してしまいましょう。

メインの執筆者かつ9312

元弁護士。関西大学法学部卒。15年にわたり、債務整理、交通事故、相続をはじめとして、オールジャンルの法律問題を取り扱う。
債務整理では、任意整理、個人再生、自己破産の代行から過払い金返還請求、闇金への対応、個人再生委員、破産管財人、法人の破産まで数多くの事案を担当経験する。

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