任意整理の費用とは
- 債務整理の中で最も安い費用で手続きができる
- 任意整理は選ぶ専門家(弁護士・司法書士)で費用は変わる
- 着手金なし、減額報酬なしの事務所を選ぶと費用は安くなる
- 経済的に困っている方は法テラスを利用すると良い
- 自分で任意整理をすれば実費のみ。ただし手続きの難易度は高い
「任意整理」を検討する際に気になるのは費用面ではないでしょうか。借金を抱えている中で、出費はできるだけ抑えたいものです。
任意整理は、弁護士や司法書士といった専門家に依頼するのが一般的ですが、そこでかかる費用は、債権者数、債務額、また事務所の方針によっても異なってきます。
この記事では、
・任意整理にかかる費用項目と相場
・費用を安く済ませる方法
以上2点について解説します。
任意整理にかかる費用とは
任意整理は、債権者と直接交渉をして「将来の利息をカットする」「返済方法を見直す」という手続きです。複数の借入れがある場合、それぞれの債権者と個別に借金の減額交渉をおこないます。和解が成立したら整理後の借金を3~5年の分割で返済していきます。
借金の種類は、消費者金融からの借入れだけでなく、クレジットカードのショッピングのリボ払いや銀行カードローンも対象になります。住宅ローンは整理の対象から除くことができます。
任意整理は、ほとんどの人が弁護士・司法書士に依頼しますので、費用はこれらの専門家に支払う報酬が主です。まれに自分で任意整理をおこなう人がいますが、それが成功できれば費用は通信費などの実費(債権者1社あたり2,000円程度)のみで済みます。
しかし、任意整理の手続き・交渉は複雑です。費用対効果を考えた場合、債務整理の実務に詳しくない人には、おすすめできない方法です。
任意整理にかかる費用項目と相場
まずは、任意整理をおこなう場合の最も一般的な方法である「弁護士」や「司法書士」といった専門家に依頼した場合にかかる費用項目と相場についてご説明します。
任意整理費用項目 | 内容 | 費用相場 |
---|---|---|
法律相談料 | 借金問題の解決相談 | 30分 5千円 *無料の事務所あり |
着手金 | 初期費用 | 債権者1社 1~5万円 |
報酬金 | 和解成立の出来高払い | 債権者1社 2~5万円 |
減額報酬 | 借金減額分の出来高払い | 減額金の10% |
過払い金返還報酬金 | 払い過ぎた利息の返還 | 基本報酬2~3万円、成功報酬15~20% |
実費 | 通信費(切手、印紙など) | 1社 2,000円 |
それぞれの項目を詳しく見ていきましょう。
法律相談料
法律相談料は司法書士・弁護士へご自身の借金問題を相談する際の費用のことです。無料で実施している事務所もあれば、有料の事務所もあります。有料の場合は30分5,000円が相場です。債務整理に注力している専門家は相談無料の事務所が多くなっています。
法律相談では、費用面の確認とともに、「どれぐらい親身になって相談にのってくれるか」「相性面で問題が無いか」をチェックする必要があります。いくつかの事務所に相談して依頼先を決めるのがよいでしょう。
着手金
着手金とは最初に支払う初期費用のことです。弁護士・司法書士は業務に着手する際に、最初に事案についての調査や事務手続きをおこないますが、その準備費用と考えれば分かりやすいでしょうか。
着手金は任意整理に成功しても失敗しても支払うものになります。借金問題に強い事務所の中には初期費用・着手金を無料にしている専門家もいます。
報酬金
報酬金とは債権者との減額交渉が和解成立した際に発生する金額のことです。成功報酬金あるいは出来高払いとも言います。日本弁護士会の基準では上限は設けられていませんが、債権者1社あたり2~5万円ほどが大まかな費用相場になります。
また、任意整理では、さらに「減額報酬」として減額できた総額の10%程度を支払うのが通例となっていますが、弁護士・司法書士の中には減額報酬を取らない事務所もあります。減額報酬の有無で支払う金額は大きく変わってきますので、事前に確認が必要です。
【ワンポイント】減額報酬とは?その仕組み 減額報酬とは、借金を減額した分の報酬が発生するというものです。事務所によって異なりますが10%が多くなっています。 借金減額が100万円で減額報酬10%の場合には、10万円になります。つまり、減額報酬金額10万円が加算されます。 |
過払い金返還報酬金
過払い金とは貸金業者に過去に払い過ぎた利息のことです。任意整理の手続きの際には、過去の借金の利息の引き直し計算をおこないますが、そこで過払い金が発生していれば債権者に返還請求をおこないます。この返還に成功した場合に支払うのが「過払い金返還報酬金」です。
過払い金の報酬は主に2通りで「基本報酬」と「成功報酬」があります。基本報酬は債権者1社あたりに発生する費用のことで、成功報酬は取り戻した過払い金に対する費用です。基本報酬は2〜3万円、成功報酬は15~20%が相場となっています。
実費
実費とは、任意整理の実際の手続きを進める上でかかる諸費用のことです。具体的には、債権者と交渉・手続きをする上で発生する、郵便費用などの通信費(切手代など)や交通費、収入印紙などが、実費として支払いの対象となります。債権者1社2,000円程度が相場です。
司法書士・弁護士に依頼した場合、報酬などとは別に実費が請求されます。ちなみに自分で任意整理をおこなう場合にかかる費用はこの実費のみとなります。
自己破産、個人再生との費用面の比較
債務整理には、任意整理の他に、自己破産、個人再生という裁判所を介した手続きがあります。司法書士・弁護士に依頼した場合、ご覧のように大きな金額差がでます。それぞれ借金整理の目的・方法は違いますが、費用面において、任意整理は最も導入しやすい手続きということを覚えておきましょう。
手続きの特徴 | 司法書士・弁護士の費用相場 | |
---|---|---|
任意整理 | 将来利息のカット(債務減額) | 1社あたり2~3万円 *減額報酬10% |
個人再生 | 借金を1/5に減額 | 約30~50万円 *住宅ローン特則の有無で変わる |
自己破産 | 返済の免除 | 約30~50万円 |
任意整理の費用を安くする方法について
任意整理をおこなう場合にはできるだけ費用を抑えたいものです。安くするための工夫や手続き方法についてご紹介します。
法テラスを利用する
法テラス(日本司法支援センター)は、国が設立した組織で、一般の人が身近に法律相談を受けられるようにするために設立されました。法テラスと契約している弁護士・司法書士が借金問題をはじめ幅広い民事事件・刑事事件の相談に乗ってくれます。そして相談した弁護士・司法書士に依頼することができます。
経済的に困っている人には、司法書士や弁護士に依頼する費用を法テラスが立て替えてくれる制度があります。その費用は毎月分割で返済して返します。任意整理においては、法テラスに依頼した場合、報酬金は発生しないのでそのぶんの費用が安く済むのは大きなメリットの1つといえるでしょう。
一方で法テラスにはデメリットもあると言われています。それは主に次のようなものです。
【法テラスに依頼するデメリット】 |
---|
・借金問題に詳しくない弁護士・司法書士が対応するケースがある ・飛び込み相談では司法書士や弁護士を選べない。 ・司法書士や弁護士が熱心に対応してくれない懸念がある。 ・経験の浅い司法書士や弁護士が多い。 ・審査が通るまで時間がかかる。 |
任意整理を法テラスに相談してみるのは一つの方法です。やはりメリット・デメリットはありますので、借金問題に強い専門家と比較しながら依頼先を検討するのが良いでしょう。
【参照】法テラス公式ホームページ
費用が安い司法書士や弁護士を選ぶ
任意整理の費用の相場は前述したとおりですが、事務所ごとに費用は異なりますので、なるべく安く設定しているところを選ぶとよいでしょう。任意整理で費用を安く抑えるためには以下の4点をチェックした上で専門家を選びましょう。
・法律相談が無料
・着手金が無料
・報酬金が安い
・減額報酬を取らない
なお、司法書士と弁護士を費用面で比較すると一般的に司法書士のほうが費用を安く設定している事務所が多い傾向にあります。これは、債務整理の業務を専門に取扱う事務所の数が司法書士のほうが多いせいもあるでしょう。
しかし、弁護士の中にも借金問題に注力している事務所はあります。司法書士と同じように低額な費用に設定している事務所はありますので、費用面においては、司法書士・弁護士にこだわらず、幅広く比較検討したほうが良いでしょう。
任意整理の費用については、日本弁護士連合会、日本司法書士連合会が指針を示していますので参考にしてください。
【参考】:債務整理の弁護士報酬のルールについて
【参考】:債務整理事件における報酬に関する指針
【ワンポイント】:1社あたりの債務が140万円以上の場合は司法書士よりも弁護士 司法書士は債権者1人あたり140万円以下の案件しか受任できません。したがって債権者1人(1社)から140万円以上の借り入れをしている場合は、債務者自身で任意整理をおこなうか、弁護士に頼む必要があります。 |
【ワンポイント】:訴訟になる場合は司法書士よりも弁護士司法書士の代理権は簡易裁判所で裁判をする場合にだけ有効なので、もしも訴訟がもつれて相手方が地方裁判所に訴えた場合は、弁護士に新たに依頼し直す必要があります。 |
減額報酬が不要な事務所を選ぶ
減額報酬は利息制限法で借金を再計算して減った金額(当初の金額と計算後の金額の差額)に対する専門の成功報酬です。減額したぶんの10%程度が報酬の相場となっています。
例えば100万円あった借金が、依頼して60万円に減った場合、減額した40万円の10%、すなわち4万円が減額報酬として発生するということになります。
この減額報酬を請求しない弁護士・司法書士事務所もあります。減額報酬のあるなしで費用総額は大きく変わるケースもありますので、専門家への相談時にはこの項目があるか確認が必要です。
分割払いで支払う
弁護士・司法書士の中には費用の分割払いに対応している事務所があります。任意整理の分割払いの回数は36回が基準で、1ヶ月に1回の返済で3年間の長期分割払いにしてもらうことができます。費用が安くなるわけではありませんが、支払い面でのメリットが大きいので多くの人がこれを利用します。
自分で任意整理をおこなう
任意整理は司法書士や弁護士に依頼するのが一般的ですが、自分でおこなうこともできます。その場合、当然ながら着手金や成功報酬を支払う必要がなくなります。支払うのは切手・印紙などの実費だけで済みますので費用面で大きなメリットがあります。
ただし、専門知識のない人が任意整理をおこなう場合、デメリットも多いため注意が必要です。
【自分で任意整理をおこなうデメリット】 |
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・煩雑な事務手続きが必要になる ・債権者に相手にしてもらえない ・専門知識がないため交渉が進まない(時間がかかる) ・返済遅延があった場合、取立てをストップできない ・過払い金の存在に気が付かない ・利息の引き直し計算が正しくできない |
まとめ
利息を払うだけでも精いっぱいで、いつになっても元金が減らないという場合に任意整理は最適な手続きです。しかも債務整理の中では費用面において最も安くおこなえます。
弁護士・司法書士に依頼すれば、借金の取立ては停止します。毎月の返済の大幅カットや過払い金の返還も期待できます。任意整理は、借金整理の中でも費用対効果が高い手続きといえますので、一度、専門家に相談して検討してみるとよいでしょう。